目視できないブレーキパッドの交換目安はさまざま
問題はブレーキパッドの摩耗状況の確認だ。
ブレーキキャリパーのスキ間から表側は見えるが、内側が同レベルで摩耗しているとは限らない。
とくにシングルピストンの片押し型(フローティング)ブレーキキャリパーは、内側のパッドのほうが磨耗しやすい傾向だ。
やはり正確な磨耗状態を確認するには、タイヤを外すしかないだろう。
一般的に新品時のパッドの厚みは、車種によって異なるが約20mm前後。
その半分くらいが交換の目安だと言われている。
きっと「まだ半分も残っているのだから、もったいない」と思う人も多いことだろう。
「ブレーキパッドの摩擦材は、半分以下になるとそれまで二次曲線的に摩耗が進行します。つまり、新品時から半分まで減るのに3万kmを要したから、あと3万kmは使えるとは思わないでください。
さらに摩擦材が薄くなる分、ブレーキングで発生した熱が裏板からブレーキキャリパーのピストンへと伝わり、最悪の場合ブレーキフルードを沸騰させてベーパーロック(フルードに空気が溜まりブレーキが効かなくなる)となってしまいます」と語るのは、ブレーキパッドやローターなどを製造・販売する「ディクセル」の金谷氏。
ヨーロッパは、1回の走行距離が長く(すぐにパッド交換ができない)、速度無制限の高速道路「アウトバーン」など高速域からのブレーキングが求められる(ブレーキ系が高温になりやすい)ため、ブレーキにとっては過酷だ。
それゆえ、一部のヨーロッパーでは残量が半分でパッドの摩耗を知らせるセンサーが感知するように設定されている。これは、早めに警告を発することで安全を担保するためといえるだろう。
ちなみに、ブレーキパッドの摩耗警告センサーを持たないクルマは、パッドの側面に金属のパーツが付いている。パッドの摩擦材がある一定量以下になると、その金属パーツが制動時にローターに接して大きな音を出す(ギーッといった)ことでブレーキパッドの交換時期であることを知らせる。
ちなみにブレーキのリザーバータンクの液量からパッドの摩耗状態も判断できる。
それは、ブレーキフルードがエンジンオイルのように消耗するものではないので、パッドが減ってくるとキャリパーのピストンが押し出され、リザーバータンクの液量が下がるからだ。
ただし、車検時にブレーキフルードを交換したり、継ぎ足しをしていると、これは当てはまらなくなるので要注意だ。ちなみにブレーキフルードの交換は2年毎が基本だ。
ここで注意してほしいのが、ブレーキローターとブレーキパッドの交換タイミング。
ブレーキローターを交換するときは、できれば同時にブレーキパッドも替えるのがオススメ。その理由は、パッドが古いローターの摩耗状況に合わせるように減っているので、新しいフラットな面をもつ新品ローターに接しにくい形状になっているからだ。
もちろんパッドのみの交換でも、摩耗したローターの形状に摩擦材が減るまで(馴染むまで)は、ジャダーなど振動が出やすい傾向にある。
また、ブレーキのナラシも必要。詳細は以下をクリックしてほしい。
ブレーキパッドの「焼き入れ」は百害あって一利無し!正しいブレーキのナラシとは
また、ブレーキパッドやブレーキローターは、高額だから良いというものではない。社外品のブレーキパーツには、スポーツ用やストリート用など用途に応じたタイプを揃えているので自分の走るステージをよく考えて選ぶと良いだろう。
このようにブレーキ系パーツは、交換サイクルをガンバって伸ばしても命を危険にさらすだけ。
「少し早いかな?」というくらいで交換するのがオススメだ。
取材協力:ディクセル http://www.dixcel.co.jp/
撮影協力:田中オートサービス http://www.tanakaauto.com/
撮影:吉見幸夫