キャンピングカーも走ってしまえば乗用車と同じ
運転者には申し訳ないけど、クルマの中で眠るのはじつに気持ちのいいものだ。特に高速道路などの長距離移動中では、時に家の布団で眠るよりも安眠できたりもする。
ただ、どれだけよく眠れても困るのが、クルマを降りると必ず体が強ばっていて、所々な関節が痛みを訴えること。やはり、寝るなら体は上下左右にゆっくり伸ばしたい。いくらシートをリクライニングさせても、横になる楽チンさにはかなわない。
そこで思いつくクルマが、ベッドを標準装備している「キャンピングカー」。もともと眠る目的のために作られたキャビンだから、ここで寝たまま移動できたら、さぞや快適に眠れるだろうと思う。
ところが、これはNG。残念ながら、「キャンピングカー」でもベッドに寝たままの移動は許されないのだ。何故ならば、自動車が移動するとき乗員はシートに座るのが大原則。いくらレジャーのために特化した「キャンピングカー」といえども、道路運送車両法で定められた、自動車のカテゴリーというわけである。
最近の「キャンピングカー」は、フルコンバージョン(フルコン)タイプと呼ばれる、ワンルームのようなキャビンを備えたものから、ワンボックス車をカスタムしたバンコンバージョン(バンコン)タイプ、軽自動車ベースのカスタムモデルまでバリエーションが幅広い。それでも人を運ぶ自動車だから、どんなモデルでも”走行中に乗員が座るためのシート”が、必ず乗車定員分用意されているのだ。
ちなみに、キャビンをカスタムメイドする場合、横向きのシートレイアウトも可能。もちろんシートベルトを備える必要があるが、前向きが三点式なのに対して、横向きは二点式ということになっている。
ちなみに、牽引タイプの「キャンピングトレーラー」ならばどうか。
「キャンピングトレーラー」は、レジャーのためにより特化されたコンテナのようなものであり、自走できるクルマではない。”部屋としてできてるんだから寝ることもOK!!”と思いきや、これもアウトであり走行中に寝ることは不可能。というか、走行中は基本的にキャビンの中に入ること自体が許されないのである。すなわち乗員は、キャンピングトレーラーを引っ張るクルマの方で移動することになる。たとえ中で暮らせてようが、移動させるときはただの貨物というワケだ。
自動車はシートに座って移動するのが基本
では、寝ながら移動できる自動車はないのかといえば、法的にはいくつか認可されている。
一番よく知られているのは、言われればその通りの救急車。8ナンバー登録の「キャンピングカー」と同じ特殊用途自動車という法的カテゴリーで、その中の緊急自動車に属している。だから、こちらで寝るベッドはストレッチャーで、快適とかそういう類いのものではない。
さらに、介護タクシーなどの福祉車両にも、寝たまま移動できるクルマがある。乗せるベッドは救急車よりは立派になるが、基本的にはストレッチャーという解釈らしい。救急車に比較すれば、日常的に寝ながら移動できる点で今回の内容に近いが、それにしても誰もが使うという自動車ではない。
やはり、自動車はシートに座って移動するものであり、決して寝ながら移動するものではないのだ。
ちなみに、長距離の高速移動といえば、「ゆっくり眠れる」と評判のいい高速バスがある。
最近は完全パーティションつきの個室バスも登場。ゆったり豪華なリクライニングシートが話題になったりもしているけど、このシートもフラットなベッドにはならないわけだ。
なにしろ高速を走る自動車は、”全席シートベルト装着”が基本。ベッドではシートベルトは装着できないわけで……。
(レポート:永田トモオ)