新たなるユーザー体験を提供する
本命コンパクトハッチ、デビュー
オランダ・アムステルダムで2018年3月に発表されたメルセデス・ベンツの新型Aクラス。
ユーザーに合わせて進化するインターフェイス『MBUX』を搭載し、第4世代へとシフトした小さな怪物を現行オーナー”今井優杏”が試乗テストを行なった。
【Mercedes-Benz A-Class】
いよいよAクラスがフルモデルチェンジを果たす。
欧州ではすでに発売開始されているものの、日本導入は早くて今秋。遅ければ年を跨ぐ可能性もあり、発売の日程は未定だ。しかし、ちょっとでも気になっている人は今から情報を収集しておきたい。ハッキリ最初に言い切ろう。次のAクラスは相当な“怪物”なのである。
まず、これからのメルセデス・ベンツの根幹からの変革を象徴するテクノロジーとして、『MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)』というマルチメディア・システムが初採用されるという点。これを皮切りに、今後全モデルに展開される最新技術だ。
最大の特徴は人工知能による学習機能を持つという点にある。特定のユーザーに個別で対応する能力を持つモノで、たとえば火曜日にいつもジムに立ち寄るユーザーには、火曜になれば自動的にジムへのナビゲーションを行なう、なんていうこともしてくれるという。
むろんアップデートも随時行なわれ、クルマとオーナーとのより密度の高いコミュニケーションを目指していく。つまり、究極のパーソナライズが実現されると考えて欲しい。夫婦で一台のAクラスをシェアする場合、それぞれに設定することも可能だ。
ユーザーと『MBUX』とを結ぶインターフェースは、従来のメータークラスター+タブレット型画面から大きく刷新されている。標準では7インチのディスプレイ2枚を繋げて、あたかも一枚の長いパネルのように見立てたインストゥルメントクラスター+タッチスクリーン機能付きメディアディスプレイが用意される。
これはステアリングホイールの向こうに、まるで映画館のごとく美しいグラフィックが継ぎ目なく展開されていて、非常に先進的なルックスながら、視覚的にも使い勝手にも優れた逸品だ。操作は、中央にあるパネルがタッチ式に対応しているほか、すでにSクラスにも採用されているステアリングホイール左右に振り分けられたセンサー式タッチコントロールボタンや、同社お馴染みのセンタートンネル上コンソールに備えられたタッチパット+マルチファンクションボタンで行なえる。
加えて、今回の目玉となるコマンド(命令)方式は、”声”。そう、かのSiriやアレクサのように、ユーザーの呼びかけで『MBUX』を起動させることが出来るのである。そのセリフこそ”ヘイ、メルセデス!”だ。試乗会では英語にしか対応していなかったのだが、ローンチの際には世界各国向けにローカライズされる。
しかし! ここまで熱弁しておいて今更アレなのだが、実は心底驚いたのは、クルマとしてのド級の進化だということを最後にお伝えしておきたい。何を隠そう、筆者は現行型A180スポーツのオーナーなのだ。その私が、髪掻きむしる勢いで嫉妬した。この走り、すでにCクラス!
取材時に用意されたのは3つのバリエーションで、ガソリンが1.4ℓ直4ターボのA200と、2.0ℓ直4ターボのA250、そしてディーゼルが1.5ℓ直4ターボのA180d。これらすべてが新型のエンジンを搭載し、A180dとA200に関しては8速DCTも新設計だ。また、プラットフォームもすべて新設計となる。
そのうち、日本導入が色濃いガソリンモデル2種に試乗したが、どちらも前期とは親子ほども差がある。エンジンは踏みはじめからタイムラグなく滑らかにスルっと加速し、特にA200は現行型よりもさらにダウンサイジングされながら、現行よりも数段パワフル、かつシームレス。さらに静粛性も抜群で、ただただ見事。
A250になれば、トルク、静粛、またフラットな居住性をもたらすサスペンション・チューニング、どれを取ってもため息モノの仕上がり。
これまでのAクラスは正直、ブランド内でもキワモノ感の強いキャラ付けだった。しかし、新型からは、まごうかたなきラグジュアリー・フィーリング。到着を心待ちにしたい。
Linaxをベースにした『MBUX』を搭載する。スマートフォンなみの操作性と音声認識、そしてAIによる学習機能により、ドライバーに寄り添う存在となってくれる。7インチまたは10.25インチディスプレイを2枚繋いだインパネ回りが未来的だ。ホイールベースを30mm延長したことで室内空間はより拡大している。
『MBUX』の表示はワイドなタッチスクリーンに。「Nvidia社」製の強力なチップを搭載することで、操作性や反応は従来の車載情報システムとは段違い。
従来通り手書きの入力にも対応している。スマートフォンに慣れたヒトたちにとっては、ハードキーよりも親しみやすいデバイスと言えよう。
日本導入が予想されるのは、163ps/250Nmを発揮する1.4ℓ直4ターボ(A200)と、224ps/350Nmを発揮する2.0ℓ直4ターボ(A250)。
奥行きが115mm拡大されて、370ℓに容積が拡大したラゲッジスペース。コンパクトながら実用性はしっかりと向上しているのも見逃せない。
ローンチモデルは特別仕様車
欧州ではローンチモデルとして特別仕様車”Edition 1”がラインアップ。AMGのスタイリングキットを装着し、インテリアトリムも専用モデルに。さらに19インチホイールも装着されている。日本でも早期導入を期待したいものだ。
http://www.mercedes-benz.co.jp
(レポート:今井優杏)