“車いす移動車の定義”で変わる登録の区分
福祉車両で8ナンバーが付くのは「車いす移動車」となるのだが、この「車いす移動車」には5(3)ナンバーのクルマもあるので、区分けがどうなっているのかわかりにくい面もある。
例えば、日産自動車が販売する軽自動車の車いす移動車「日産NV100クリッパー チェアキャブ(以下クリッパー)」と「NV100 クリッパーリオ チェアキャブ(以下リオ)」との比較。この2台は車いす移動車としての装備を比べるとほぼ一緒で、乗車定員の変更もない。しかし、登録区分が異なるのだが、理由は”車いす移動車の定義”が関わっているのだ。
そもそも、8ナンバーを取得するには”車いす専用”となる専有面積が2分の1以上であることが条件。軽バンの「クリッパー」は、車いす移動車に仕立てるとリアシートが1席分しかなくなるので、車いすの専有面積が2分の1となり8ナンバー取得の条件を満たせる。
それに対して「リオ」は車いすを載せる装備を付けても、載せないときにはリアシートが標準車と同じように展開できるのでこの部分が専有面積と見なされない。その理由から8ナンバーが取得できないのだ。
ちなみに、ミニバンの「日産セレナ」にも車いす移動車を設定している。
こちらも5(3)ナンバーと8ナンバーがあるが、床面積が広いセレナで8ナンバーとなるのは車いす用の電動リフト付きのモデルのみ。これはリフトが動作する都合上、3列目のシートが取り外されるので、そのスペースも「車いす専用」と見なされ、車いすが載るスペースと合わせると専有面積が2分の1を超えるためだ。
このように福祉車両の8ナンバーとは車体仕様の違いによるもので、8ナンバー化することで税制面の優遇を考慮したものではない。確かに税制面ではお得なのは8ナンバーではあるが、福祉車両として本来の目的にあったクルマ選びをしてほしい。
では最後に、題材として取り上げたNV100クリッパーチェアキャブなどの「ニッサンライフケアビーグル」シリーズを販売する日産自動車に「日産が作る福祉車両の特徴」と「福祉車についてこれから目指すこと」について聞いたので紹介しよう。
「福祉車両についてはユーザーの声からアイデアを発掘し、商品企画、開発、生産、販売、アフターサービスまでの“一貫したもの作り”を実現しています」とのこと。
実際にユーザーからはハイブリッド車の福祉車両を望む声もあったので、セレナe-POWERに「昇降シート」や「車いす仕様車」を設定しているが、この流れは「セレナに留まらず“ニッサン インテリジェント モビリティ(最先端の技術で乗る人を未来のワクワクへと導く)”を福祉車両に順次採用していく」とのことだった。
現在のところ、軽自動車からワンボックス車まで福祉車両を1社でフルラインアップしているところは日産自動車のみ。
福祉車両を必要とする人のみならず、今後の高齢化社会を見据えて日産のホームページでチェックしておくとよいだろう。
(レポート:深田昌之)