高齢化社会に対応した日本の免許制度
世界でも類を見ない「超高齢社会」時代を迎えている日本。
高齢者が重大な交通事故の当事者になってしまう事案も多く報じられています。2017年3月の道交法の改正でも高齢運転者対策が推進されました。
今回は70歳以上の人が運転免許(普通免許)を更新するときに必要な手続きについてご紹介します(2018年7月現在)。
70歳から74歳までの人は
「高齢者講習(合理化)」約2時間
70歳以上の方が免許を更新する場合には、「高齢者講習」の受講が義務付けられています。その中でも70歳から74歳までの人と、75歳以上の人では、手続きの内容が違います。
まず更新期間満了日に70歳以上75歳未満の人は、2時間の「合理化講習」を受けるのが決まりです(2017年3月の法改正で時間が短縮されたので「合理化」と呼ばれています)。
座学は約60分。
教本やビデオを使用しながらの「双方向型講義」は、受講者への質問や会話も取り入れられ、理解度を確認しながら進みます。
また検査機材などで運転適性を診断し、それに即したアドバイスや指導も行われます。
教習所内のコースでの運転指導も60分。教習車を使って実車走行をしながら安全運転への理解を深めます。ただし小型特殊免許のみの方は、実車はありません。
ちょっと裏ワザ?「チャレンジ講習」
高齢者講習以外にも70歳以上の方々が免許を更新する方法はあります。
それが「チャレンジ講習」。コースを走行して運転の指導(検査)を受け、70点以上の評価を得られれば、簡易版の講習を受けて免許を更新することができます。手数料は高齢者講習と比べて若干お手ごろになります。
ただし、いわゆる「一発免許」と同じように(もちろん内容は違いますが)、落ちてしまえばイチからやり直し。さらに実施場所の少なさなどデメリットも多く、チャレンジ講習を選ぶ方は多いとは言えません。
75歳以上は「認知機能検査」と「高齢者講習」
記憶力と判断力の程度によっては診断書も必要
満75歳以上になる人が免許を更新するには、まず「認知機能検査」の受検、そして「高齢者講習」の受講が義務付けられています。
「認知機能検査」で行われる検査は大きく3つ。
「時間の見当識」は、その日の年月日や、そのとき何時何分かなどを答えます。
「手がかり再生」では、16枚の絵を記憶しその名前を回答。まずヒントなしで回答し、その後ヒントを見ながら回答します。
「時計描画」は、アナログ時計の文字盤の絵を描いて、時間を表示する検査です。
【記憶力・判断力に心配がない場合】
認知機能検査で、記憶力・判断力に「心配がない」とされたら、75歳未満の人と同じ2時間の「合理化講習」を受け、免許を更新することができます。
【記憶力・判断力が少し低くなっている場合】
記憶力・判断力が「少し低くなっている」と判定された人は、「高度化講習」呼ばれる3時間の講習を受けます。
合理化講習に比べ1時間増えるのは「個人指導」。こちらはドラレコ映像等を活用しながら、より個人のクセや運転状況に応じた講習が行われます。
【記憶力・判断力が低くなっている(認知症のおそれがある)場合】
記憶力・判断力が「低くなっている」、つまり認知症のおそれがあると判断された場合、免許を更新するには通知にしたがい「臨時適性検査」を受けるか、専門の医師の診断書を提出する必要があります。
認知症でないと診断されれば上記の高度化講習へ進み、認知症であると診断された場合は、運転免許は取消し又は停止となります。
免許証を返納すると身分証がなくなる?
また運転免許の自主返納を勧める取り組みも進んでいます。
しかし「返納すると身分証がなくなってしまう…」と心配する人もいるのではないでしょうか。
でも、その心配は無用。「運転経歴証明書」という、過去の運転経歴を証明する、免許証に似た形状のカードの交付を受けることができます。
ただし「自主返納」として扱われるためには、本人が警察署や各運転免許センター申し出て、有効期限の残っている運転免許証を返す手続きをする必要があります。
運転経歴証明書があると、様々なお店や施設で特典やサービスが受けられる場合も多いので、ぜひこの自主返納の制度も活用されていって欲しいものです。
事故の被害者あるいは加害者になってしまう確率を減らすために、ご本人も、ご家族も、常日頃から運転の様子に気を配っていきたいものです。
またどうしても運転免許が必要な場合も、安全装備の充実した車両を選ぶ、公共の移動サービスなども活用するなど、安全のためにできることから着手するのも大切なのかもしれません。
(レポート:広田ボコ)