軽自動車ベースから専用車まで
キャンピングカーは究極のカスタムカー
「キャンピングカーと聞いて、どんなクルマを思い浮かべますか?」。
足を伸ばして寝泊まりできるクルマで、ベッド、キッチン、シャワーやトイレを備えた走るホテル……、そのあたりが多くの人の想像じゃないかと思う。たしかに、ひと頃までキャンピングカーといえば豪華かつ高価で敷居の高いイメージ。
しかし、いまやバリエーションは想像以上に広がっており、小さなものは軽自動車ベースなど、駐車事情やユーザーニーズに合わせて幅広く用意されている。現代のキャンピングカーは身近な存在になっているのだ。
すなわち、”キャンピングカーならば8ナンバー”というのもかなり昔のこと。
法的に唯一キャンピングカーと認められる8ナンバーは、今もユーザーの憧れ。しかし、3ナンバー、5ナンバー乗用車、1ナンバー、さらに4ナンバー貨物車でも、キャンピングカーとして優れたモデルが豊富に用意されている。ちなみに8ナンバーにはベッド、調理スペースや熱源、上下水設備が法的に必要な装備だが、すべてのユーザーが全てを必要としているわけではない。だから、ユーザーのニーズに合わせてバリエーションが広がったというワケだ。
広大なスペースを生かした超豪華仕様
伝統的な方からいくと、専用シャーシに広いキャビンを架装した「フルコンバージョン(フルコン)タイプ」。キャビン内はホテルの部屋ような使い勝手で作られるため、ボディサイズも大きい。他にクルマで引っ張るトレーラータイプなら、さらに大きく豪華なものもあるが、狭い日本では「フルコンタイプ」がキャンピングカーの頂点といえるだろう。
そして、現在の日本での主流といえるのが、上の写真のようなトラックやバス、乗用車など既製のクルマを改造したコンバージョンモデルだ。
トラックやバンの運転席部分を残して、キャビンを架装したものは「キャブコンバージョン(キャブコン)タイプ」と呼ばれ、フルコンには及ばないものの、設備の充実度の高さが魅力。既製のクルマをベースにしながらも、キャビンのサイズはある程度自由にできるので、広さと快適性が確保できる。フルコンタイプほど駐車スペースに困らないのもメリットだ。
サイズや価格帯が身近な”バンコン”タイプ
次に、ワンボックスやバン、ミニバンなどのボディをそのままに、ルーフや内装を新たに架装したものが「バンコンバージョン(バンコン)」タイプ。最近はキャブコンタイプを超えるほどシェアを伸ばしている。
室内サイズがベース車のままなので、ルーフを高めて居住スペースを稼ぐなど、広さの点では「キャブコン」タイプよりは劣るものの、駐車スペースが一般車と変わらないのは大きなメリット。キャンピングカーでも乗用車のように日常使いが可能だ。
同じ流れで、バスやマイクロバスをベースにした「バスコンバージョン(バスコン)」タイプがあるが、これはフルコンタイプに近い内容。バスがベースなので広さはあるし、乗り心地も含めた快適性が大きなメリットとなる。反面、駐車スペースや保管場所を選ぶのはフルコンタイプと同じことだ。
気になる価格は、フルコンタイプもキャブコンタイプも新車で1千万円超えが一般的で、サイズや装備によっては2千万、それ以上もあり得る。なにしろ、これらはある意味で究極のカスタムカー。これがバンコンタイプになると、500万円前後からという価格帯に変わってくる。
軽自動車だって立派なキャンピングカー
そこで、このところ注目度が増してきているのが軽自動車をベースにした「軽コンバージョン」タイプ。サイズを考えるとキャンピングカーとは結びつきにくいが、バンコンタイプやキャブコンタイプまで用意されているのだ。
軽自動車だから、絶対的な広々さがないのは当然ながら、レイアウトの工夫や装備の充実で、乗員を2人程度に絞って、しっかりとキャンピングカーとして成立させている。価格も、キャブコンタイプの豪華モデルでも200万円台で新車が手に入るほどで、ベース車や維持費の安さなども含めてコストパフォーマンスの高さはイチバン。
軽自動車というカテゴリーを生み出した、実に日本人らしいキャンピングカーだと思う。
こういった、キャンピングカーのバリエーションが広がってきたのには、オートキャンプ場やパーキングエリアなど、キャンピングカーを受け入れる施設が、急速に充実してきた背景もある。アメリカのように広い国土を渡り歩くなら、キャンピングカーに家と同じ装備はマスト。しかし、山の中まで電気の通じているような日本では、現地で提供を受けられる設備やサービスも多い。
その意味で、今時のキャンピングカー選びには、交通環境や観光地のサービスなども少なからず影響しているといえそうだ。
(レポート:永田トモオ)