パワフルさよりアクセルコントロールに忠実な
シーンを選ばぬドライバビリティを選択した
コンサバティブなデザインが洋の東西を問わず人気の高い「スバル」のSUV『フォレスター』が、フルモデルチェンジしキープコンセプトで進化した。
国内では年間2万台弱の販売台数で大ヒット車というイメージではないが、北米地域では年間17万台以上を販売し、世界全体では28万台もの市場規模を維持しているのだからスバルとしても力が入るわけだ。新型となった今回のモデルは、1997年の初代から数えて5代目となる。その最大の特徴はターボ過給器付きエンジンが廃され自然吸気のみの設定となったことだろう。一方でハイブリッド(HV)仕様も設定され新しい世界観を打ち出してきている。
2リットルターボHVのシステム出力は
NA2.5リットルとほぼ同等だが・・・
まずはガソリン仕様に試乗してみよう。インプレッサで採用され評価の高いスバルグローバルプラットフォームを採用しながらオフロード走行も可能なSUVとして最低地上高220mmを確保。一方で最小回転半径が僅か5.4mという取り回し性の良さも特徴的だ。
インパネや室内の造作は質感が高まり、高級感が漂う。視認性のよいメーターやモニターのレイアウトとスイッチ類の操作性の高さで運転しやすい。
インプレッサと異なり全車AWDの4輪駆動車となっていることもフォレスターの存在意義を示しているだろう。2.5リットル直噴水平対向4気筒自然吸気エンジンは最高出力184PS。最大トルクは239Nmを4400rpmで発揮する。
だが正直言ってトルク不足感は免れない。特に従来のターボ過給器付きエンジンの力強さを知っているユーザーにとっては力不足を感じるだろう。今回スロットル制御をきめ細かく行いスムーズなトルクの立ち上がりを狙ったことも扱い易さの向上と引き換えに、パワフルな逞しさを弱めてしまった印象だ。
ハイブリッド車に乗り換えると、こちらは2リットルターガソリンエンジンに10kw、65Nmのモーターパワーが加わる。
システムトータル出力としては2.5リットルモデルと似通ってくるわけだが、車体重量が100kg以上重くなる。モード燃費値はよいがドライバビリティとしては2.5リッターモデルに及ばない印象だ。
両車ともCVTトランスミッションが唸りながら加速する感覚は同じで、この点は特に改善が望まれるだろう。
しかし、フォレスターの走りはオンロードだけでなく、オフロードでより大きな役割を果たす。そういう意味では今回の電子制御装備の充実により、悪路での走破性は大きく向上していたのであった。
(レポート:中谷明彦)
<中谷明彦>
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍中。自動車関連の開発、イベント運営、雑誌企画など様々な分野でのコンサルタントも行っている。高性能車の車両運動性能や電子制御特性の解析を得意としている。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設しF1パイロット・佐藤琢磨らを輩出。