走行性能の質感をバージョンアップ!
フラッグシップモデルらしい高級感
今や「マツダ」のフラッグシップ(旗艦)という重要な位置づけを担う『アテンザ』。国内外のSUVブームに押され国内販売面では300~500台/月と苦戦を強いられているが、旗艦としてのプライドをより高めるために大幅改良を受けた。
エクステリア&インテリアの意匠変更のほか、エンジンやサスペンションのセッティングまで変更。マツダが、このクルマに賭ける意気込みを感じさせる内容だ。
試乗は一般道市街地と高速道路。改良の度合いを知るには十分な試乗コースが設けられた。
まずは2.5リットル『SKYACTIV-G』エンジンを搭載するガソリンモデルのワゴンに乗り込む。このエンジンはすでに同社SUVの『CX-5』に搭載され話題となったものと同じで、気筒休止システムを搭載している。
直列4気筒エンジンで気筒休止を採用するのは世界的にも珍しい。マツダは独自の可変バルブタイミング制御を用いて2気筒の稼動を停止するシステムを完成させた。
走行速度や負荷、アクセル位置などから演算し、気筒休止をしたほうが燃費が向上すると判断した場合に、該当シリンダーの吸排気バルブを閉じた状態で停止させ、ピストンのみが上下してポンピングロスを減らすという理論だ。
一般的にはバルブを解放した方が抵抗が少ないと考えがちだが、物理学的には空気の出入りが発生しエネルギーロスになる。他社も含め気筒休止は吸排気バルブを閉じるのが常識なのである。
だがその作動はドライブ中には全く感知することは出来ない。振動の発生もなく、音質変化もない。この気筒休止によって高速燃費は数%伸びるはずだが、効果を実感するには長い距離を走る必要がありそうだ。
ワゴンは、セダンより重量配分が向上し走行安定性も高まる。今回、さらに次世代のサスペンションチューニング技術を盛り込み走りを完成させている。
スプリングレートやダンパー径の変更によるダンピング特性の変更で、乗り心地を向上させながらも高い旋回性能を実現している。
ディーゼルモデルには6速MTを設定
次にセダンの『SKYACTIV-D』エンジンに乗り換える。2.2リッットル・ディーゼルターボエンジンは出力特性が見直され、よりパワフルかつ高効率なユニットとなった。
ガソリンモデルから乗り換えると豊かなトルク特性に改めてディーゼルの良さを認識させられた。
またディーゼルモデルには6速マニュアルミッション仕様もラインアップが継続され、AT車に対して僅か10%前後ながら安定的なシェアを獲得することに役立っているという。
<レポート:中谷明彦>
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍中。自動車関連の開発、イベント運営、雑誌企画など様々な分野でのコンサルタントも行っている。高性能車の車両運動性能や電子制御特性の解析を得意。
1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設しF1パイロット・佐藤琢磨らを輩出。