車高調に関する7つの基本をおさらい
「車高調」は、乗り心地重視の街乗り仕様からサーキットスペックまで、豊富なバリエーションで販売されている。カスタマイズ派や走りにこだわる人にとっては欠かせないアイテムと言えるのだが、車高調の”スペック”だけを見ると、どの製品を購入すべきか悩んでしまうヒトも多いハズだ。というわけで、車高調に関するマメ知識を改めておさらいしてみましょう。
その1.「ネジ式」と「全長(調整)式」
ストローク確保を狙うならば全長式
スプリング下のシートを回してバネを伸縮させることで、車高を調整するのが「ネジ式」。構造が複雑ではないので価格は比較的にリーズナブルだ。しかし車高を下げれば下げるほどダンパーの上下運動を指す”ストローク量”が減り、底付きするなど乗り心地に影響が出やすい。
「全長調整式」は、本体のブラケット位置を上下させることで車高を調整する仕組み。ストロークに影響を与えないので乗り心地をキー プしやすいメリットがある。車高の調整幅も広く、ローダウンしても乗り心地を確保したいヒトにオススメだ。
「ネジ式(写真左)」はショックアブソーバとブラケットが一体構造。車高調整幅が限られる一方で、ダンパーオイル量を多く確保できたりとメリットも存在する。
「全長調整式(写真右)」は、本体下部のブラケット(の長さ)を調整することで、車高を変えることが可能。スプリングの伸縮はそのままに、ショックのストローク量に影響を与えることもない。
その2.「単筒式」と「複筒式」
複筒式はアタリがソフトな傾向
左の「複筒式(ツインチューブ)」は、簡単に言えばシェルケースの中にもう1本筒がある二重構造。内部のガス圧を低くできるのでストローク量を確保しやすく、走行中の突き上げ感が抑えられるメリットがある。街乗り重視のローダウン派にオススメ。
また、右の「単筒式(シングルチューブ)」はシェルケースの中にオイルとガスが封入され、シリンダーの内部をピストンが上下する構造。オイルの量を多く確保でき、アシの動きの妨げになるオイルの気泡発生や熱ダレを防げるので、スポーツ走行向けとなっている。
その3.「正立式」と「倒立式」
ストラット車には倒立式が剛性面で有利
赤印のピストンロッドが上向きで、内部のピストンを上から押し込む構造が「正立式(左)」。部品点数が少なく済み、コストが抑えられる利点がある。
対する「倒立式(右)」はピストンロッドが下向きで、主に”ストラット式”の足まわりに採用される。構造が複雑なぶん価格は少々高くなりがちだが、シェルケースの容量を確保しやすく、本体の剛性を上げられるメリットを持つ。コーナリング時にかかる、横方向の荷重によるブレも少ない。
ストラット式サスペンションのクルマには、倒立式を選ぶと足まわりの剛性が高まり、正確なストロークを実現できるようになるといったメリットがある。
その4.「減衰力調整」
調整段数が多いほどハイスペック?
路面からの入力で、バネが縮んだり伸びたりするスピードを抑制するのがダンパーの役割。その抑制するチカラのことが「減衰力」というもの。この減衰力を弱めると乗り心地はソフトに、逆に強めると固めの乗り心地となる傾向だ。
調整可能な段数はメーカーやモデルによってさまざまだが、上限から下限までの幅は大きく変わらない。つまり段数が多ければ多いほど減衰力特性が優れているというワケではなく、細かく調整できるということなのだ。
なお、減衰力固定式(調整不可タイプ)は、あらかじめメーカーが車種に合わせてベストなセッティングにしてありリーズナブルな価格設定がされていることが多い。
減衰力調整ダイヤルは「正立式」が上側、「倒立式」は下側に設置。正立式は車両側のスペースの関係で調整しにくいケースもあり、その場合はダイヤルに調整用の延長ケーブルや車内で操作できるコントローラーを装着する。
その5.「バネレート」
まずはメーカー推奨から試すべし
バネ(スプリング)を縮めるのに必要な力を、数値で表したものが「バネレート」。例えば5kg/mmなら、1mm縮める力が5kg必要になるということ。
この数値が大きいほどバネが固く、逆に小さいほど柔らかく、乗り心地の目安となる(数値は足回りの構造や車重によって変わる)。乗り味が不満ならば、バネレートの異なるスプリングに交換する手もあるが、ダンパーの減衰力との相性が変化するので、サーキット走行にこだわる人やカスタム上級者以外にはあまりオススメできない。まずはメーカー推奨値のバネで乗り、減衰力を調整して変化を試してみよう。
その6.「アッパーマウント」の種類
乗り心地重視ならばゴムブッシュ式に
車高調と車体との連結を果たす「アッパーマウント」は、接合部分に金属製のボールを使用した「ピロボール式(右)」と、強化ゴムを採用した「ゴムブッシュ式(左)」に大きく分かれる。
前者はリニアなハンドリングが実現でき、スポーツ走行に最適。モデルによってはキャンバー角の調整も可能だが、場合によってはコトコトと異音が聞こえることも。後者は、異音をゴムブッシュが吸収するので、乗り心地や静粛性で有利。純正アッパーマウントを流用して製品コストを抑えた、マウントレスタイプも存在する。
その7.寿命やオーバーホール
耐久性は大きくアップしたが見極めが重要
国内メーカー品だと、3年 or 6万kmという長期間保証を付帯するモデルも多く、オーバーホール対応品も豊富。一部の格安モデルは除き、最近の車高調は品質・耐久性が向上し、寿命も長くなった。
なお、某プロショップいわく、ハイスペックな格安な車高調も多いが、減衰力のヘタリが早いケースがあるという。一概にとは言えないものの、足回りを構成するパートだけに信頼のあるメーカー品にしておきたいところだ。
自分でできるメンテナンスは、サビやシート固着の防止。海沿いや雪道を走った後などは下まわりを水洗いしたり、各メーカーから発売される防サビスプレーを定期的に吹き付けよう。素晴らしき車高調ライフを!