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オートバイにも存在した「ロータリー・エンジン搭載車ヒストリー(2輪車・前編)」

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

  • Hercules W 2000、ハーキュレス、MZモトラッド、ロータリーエンジン、2輪車、オートバイ

ロータリー・エンジンはロードスポーツだけじゃなく、オフロードモデルにも搭載されていた

 

【MZモトラッド KKM 175#】

ロータリー・エンジンを世界で初めて搭載したオートバイは、MZモトラッドの『KKM 175W』とされている。MZモトラッドは、もともとドイツの自動車・二輪車製造メーカー「DKW」の2輪部門で、第二次大戦後からMZモトラッドに社名変更。
『KKM 175W』は”Kreis Kolben Motor”(ドイツ語でロータリー・エンジンの意)の頭文字と、175ccの排気量、そしてヴァンケル・エンジン(Wankel Motor)のWを連ねてのネーミングだ。
ただし『KKM 175W』は試作車としてテストを重ねたに過ぎず、続いて1965年にはエンジンなどの設計を一新した「KKM 175L」が試作されたが、結局これも市販には至っていない。

 

【ハーキュレス W2000】

このような時代背景を経て、ロータリー・エンジンを搭載したオートバイとして初めての市販モデルとなったのがハーキュレス(Hercules)製作所が1974年にリリースした『W2000』。
ちなみにハーキュレス製作所は1904年に創立された老舗オートバイメーカーだったが、66年にフィテル&ザックス傘下の「DKW」に吸収されていた。
この親会社であるフィテル&ザックスは1960年に、ヴァンケル・エンジンの基本特許を持つドイツの自動車メーカー「NSU」および「Wankel」とライセンス契約を交わしていたので、ハーキュレスW2000の登場は、ある意味必然でもあったわけだ。

ハーキュレス『W2000』はロードスポーツ、いわゆるオンロードバイクで、こちらの写真が広く出回っていたことからハーキュレス=オンロードのイメージが定着していたが、実はオフロードバイクやロードレース仕様もリリースしていた。

今回、ドイツはニュルンベルクの北東、チェコとの国境にほど近いフィフティベルクの「ドイツ自動車博物館」で対面した1976年式の『Hercules W 2000 GS Geländesport』がそれだ。
2輪に関しては門外漢なので、それをモトクロス仕様と呼ぶのか、エンデューロ仕様と呼ぶのか咄嗟には断定できず、企画の打ち合わせでも「ロータリー・エンジン積んだモトクロッサーがあった!」「そりゃ凄い!」などと盛り上がった。だが、どうやらこれは”Geländesport”という商品名からもエンデューロ仕様と呼ぶべきモデルのようだ。

まぁモトクロッサーにしてもエンデューロ仕様にしても、ブロックタイヤでフェンダーをハイマウントに取り付けているところから、オフロード仕様であることは一目瞭然。
いまから半世紀近くも昔の話になるが、「週末になると近くの河原に整備されたモトクロスコースで、こうしたバイクが翔んだり跳ねたりするのを見て楽しんでいたものだった…」という親爺のノスタルジーはさておき、当時主流だった空冷・2ストロークの単気筒エンジンと比べると、シングルローターとはいえロータリー・エンジンのデカさは異様なほど。
もっともこれは強制空冷システムを採用していたためで、シュラウドを外してしまえば2ストローク単気筒と大差ないサイズになるはずだ。

 

Hercules W 2000 Wankel(1974-76)

Hercules W 2000、ハーキュレス、MZモトラッド、ロータリーエンジン、2輪車、オートバイ世界初のロータリー・エンジン搭載バイクとして歴史に名を残すハーキュレスW2000。初めて現車と対面したのは2009年にドイツはアルトゥルスハイムにあるオートヴィジョン博物館を訪れた時。生憎、当日は休館日で、エントランスのガラス戸から中を覗いて発見したのがハーキュレスだった。Hercules W 2000、ハーキュレス、MZモトラッド、ロータリーエンジン、2輪車、オートバイ興味深く覗いていたら、偶々通りかかったオーナーが、東洋からの熱心なエトランゼに感心したのか、特別に、少しだけ中を見せてくれた記憶があった。今回、訪ねた際にオーナーは世代交代していたが、前のオーナーからそんな話を聞いたことがある、と話してくれ感激した次第。
もっともここで紹介する個体はドイツのフィフテルベルク(Fichtelberg)にあるフィフテルベルク・ドイツ自動車博物館の収蔵車両。W2000が2台並んでいたことだけでも充分なインパクトがあった。

 

Hercules W 2000 GS Geländesport(1976)

Hercules W 2000、ハーキュレス、MZモトラッド、ロータリーエンジン、2輪車、オートバイW2000の2ショット以上にインパクトがあったのが、こちらのハーキュレスW200GS。GSとはGeländesportの略称なのか、いろいろ調べてみたが定かではない。
ともかくそのルックスが凄い。ブロックパターンの細いタイヤにアップフェンダー、というのはモトクロッサーの公式通り。筆者が中学生時代に見慣れていたモトクロッサーではクレードルフレームの中央にはシンプルでコンパクトな空冷2ストロークの単気筒エンジンが収まっていたのだが、まるでジェットエンジンのようなロータリー・エンジンは半端ない存在感であたりを圧倒していた。
エンジンは、進行方向に向かって横方向にローターが回転するカタチで搭載されている。

なお、これもフィフテルベルク・ドイツ自動車博物館の収蔵車両だ。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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