エンジンのノッキングを防止するために
ガソリンに鉛混入してオクタン価を高めた
その昔、ガソリンスタンドでは「有鉛ガソリン」と「無鉛ガソリン」が併売されていた時期があった。じつは、1972年3月までに発売された国産乗用車は、有鉛ガソリン仕様のエンジンだった。
当然のことながらトヨタ初代カローラ・レビン&スプリンター・トレノ、トヨタ1600GT、ハコスカGT-R(日産C10型スカイラインGT-R)などの旧車は有鉛ガソリン仕様だが、無鉛ガソリンしか存在しない現在はどのようなガソリンを入れれば良いのだろうか。
有鉛ガソリンとは、ガソリンに鉛(アルキル鉛)を微量添加した加鉛ガソリンのこと。なんのために、ガソリンに鉛を加えていたかというと、理由は以下の2つ。
- オクタン価を上げて、アンチノック性を高めるため
有鉛ガソリンは、オクタン価を5~15ほど上げることができ、ノッキングを抑えることができた(当時は、無鉛でオクタン価の高いガソリンを作る技術がなかった)。- バルブシート保護のため
鉛がバルブシートの摩耗を防ぐ、潤滑・クッション材の役割をしていて、バルブシートを保護していた。
ところが、1970年に鉛の人体への有害性が指摘され、触媒にも悪影響があることが分かったため、1975年にレギュラーガスは無鉛化。1987年にはハイオクも無鉛化され、現在では有鉛ガソリンは販売禁止となっている。
この移行期間に製造されたクルマは、ガソリンの種類を表示するステッカーが貼られていて、青色=「無鉛車」、赤色=「有鉛車」、オレンジ=「高速等有鉛車」、緑色=「混合使用車」と色別で表示されていた。
少なくとも、平成以降のクルマはすべて無鉛ガソリン仕様なので、こうしたステッカーは見られない。
だが、前述したような有鉛時代の旧車オーナーになった場合、ガソリンはどうすればいいのか?
基本的には市販のハイオク=無鉛ハイオクを入れておけば問題ない。
とくに青の無鉛車なら普通のレギュラーガスでOK。オレンジの高速等有鉛車でも、ハイオクで大丈夫だ。
有鉛指定の旧車でも、鉛が添加されていない分、バルブシートの摩耗は若干速くなるかもしれないが、週末ときどき乗るぐらいなら、いまのハイオクガスでほとんど問題なし。
心配な人は、無鉛ガソリンを、有鉛ガソリンのような潤滑効果を持たせる専用の添加剤があるので、これを利用すれば万全である。
いずれにせよクルマに乗っている限り、いずれバルブシートは摩耗するので、そうして圧縮が保てなくなってきたら、オーバーホールの際に、バルブシートを無鉛用に交換すれば万事解決できることも。
旧車の場合、以前のオーナーがすでに無鉛化対策しているケースも考えられるので、入手時に確認しておくといいだろう。