パーツが製造中止になっても
R32GT-Rは蘇ることができる
9月9日静岡県・富士スピードウェイで開催された世界最大級のGT-Rの祭典「R’s Meeting 2018」。2006年の初回から今年で11回目となるこのイベントだが、昨年のイベントで「カナザワボディリペア」がフロント部分を大破したR32スカイラインGT-Rを展示して注目を浴びていた。
そのクルマが、今年見事に復活を遂げ、ブースに出展されていた。
平成元年に登場したR32スカイラインGT-Rは、もっとも古いモデルなら30年目を迎える。R32GT-Rが登場した当時「ケンメリGT-R(KPGC110スカイライン)から16年ぶりの復活」とケンメリGT-Rがもの凄く過去のことのように言われていた。だが、今となってはそれを十分に超える年月を経過しているのがR32GT-Rなのである。
当然のことながら、さまざまなパーツの製造が中止され(製廃)、事故などで壊してしまうと修理するのは困難を極める。「カナザワボディリペア」が昨年のR’s Meeting 2017で展示したのは、そんな修理が困難なR32GT-Rの事故車。ピカピカに磨き上げられたクルマが展示されている他のブースの中で異彩を放っていたのは言うまでもない。
「カナザワボディリペア」のブースで行われたトークショーで金沢代表は、「来年(2018年)のR’s Meetingでは、このクルマを復活させます」と言っていた。
それを見事に成し遂げた。
フロントシャーシ、フードレッジ(ストラットタワーまわりのパーツ)は交換され、バンパーやリップスポイラー、ウインカーは新品パーツが残っているが、フェンダーやヘッドライトなどは製廃されているので、中古パーツで対応しなければならなかった。いや、ほとんどのパーツがメーカーから入手できない状態だったそうだ。フロントから押されて歪んでいたAピラーも見事に修正されている。
ここまでの修復には1年を要し、ほんの数日前にボディコーティングを施し、まだオーナーの手元には戻る前の出展となった。
修復に使用した中古パーツは、当然のことながらそれなりの手直しが必要となっているそうだが、仕上がったR32GT-Rを見る限り、どこが新品でどこが中古のパーツなのかまったく見分けは付かない。
製廃されているコアサポートは、R32スカイラインGTS(後輪駆動の基準車)のパーツを加工して装着したそうだ。
「GT-Rのオーナーさんには、事故などで壊れてしまっても修理を諦めないでほしいということを知っていただきたかったのです。確かに時間と費用はかかりますが、R32GT-Rは直せます」と金沢代表は語る。
展示されていたもう1台のR32GT-Rは、カナザワの新デモカー。エンジンを換装するのを機にエンジンルームのリファイン(再塗装)を施す提案なのだと言う。また、ノーマルR32GT-Rではリヤシートの背面ある空洞に新たに制作したカーボンパネルを装着することで剛性がアップするそうだ。
ちなみに、気になる事故を起こしたホワイトのR32GT-Rの修理費は、パーツ代が約350万円。工賃込みで約500万円相当になるそうだ。
確かに高価ではあるが、高価なリバイバルパーツは使用せず、パーツ集めによるコスト削減などの努力を持って、さらに修理には1年を要したこと(それを停めておくスペースの確保など修理以外にもお店への負荷も多い)を考えれば決して高くはないはずだ。
個人的には、R32GT-Rは現役のクルマのように思える。
だが、平成元年当時に約30年前のクルマと言えば初代スカイラインの頃(1957年〜)。十分な旧車という印象だった。
それと同じくらいの年月を経過していても、その性能は未だに色あせないところもR32GT-Rの凄さでもあると感じさせる。