軽自動車初となる本格四輪駆動車は
3期に渡って独自の進化を果たす
昭和45年に誕生したジムニーは、ビッグマイナーチェンジを何度が実施しつつ着実に進化してきた。
そのために1代あたりのモデルサイクルが非常に長い。今回、ジムニー専門店のアウトクラスカーズが所有する貴重な歴代ジムニーをもとに、その歴史を詳しく掘り下げたいと思う。
第1回目は、まさに実用第一主義だった初代を振り返る。
スズキの軽自動車としては、キャリイの次に息の長いモデルとなるジムニー。
初代がデビューしたのは1970年、今から約50年前のことである。1代あたりのモデルサイクルが非常に長いことは、2018年も生産された先代モデル”JB23″が証明している。初代はまず第1期として、”LJ10″が登場。当時はまだ黄ナンバーの軽規格(550cc)がなく、360ccだけに与えられた小さな白ナンバーだった。今でこそジムニーはアウトドアやドライブに大活躍な遊べる4駆だが、当時はそういった目的で購入する人は少なかったという。
「昔は林業などの仕事車として使う方が多く、アウトドアを楽しむ人は皆無。まさに質実剛健というか、実用性重視で遊び心はなかったですね。スタイリングは個性的ですけどね」とは、アウトクラスカーズ代表の赤地サン。
その後は”LJ20″を経て、76年に初代第3期となるSJ10″がデビュー。この年は軽自動車の規格が改正され、排気量は360ccから550ccへと大幅にアップ。力強い走りを可能にした。
「SJ10の1型は、LJ20の車体をベースにエンジンだけ550ccを搭載しています。LJ20のヘッドライトは、ちょっとツリ目っぽい感じにレイアウトされているので、マニアな人には『ツリ目』と呼ばれて親しまれていますね」。
11年生産が続けられた初代は、2代目第1期・SJ30へとフルモデルチェンジ。見た目は大きく変わらないものの、着実に進化を遂げて来た初代モデルを具体的に見ていこう。
【第1期 LJ10(1970-1972)】
4輪駆動性能をフルに発揮
4輪駆動の技術はホープスターON360を参考にしているが、自社生産としての効率を考えて細部を徹底的に見直したLJ10。エンジンはキャリイの空冷360cc、トランスミッションもキャリイに採用されていた物を流用した。
トランスファーは低速・高速の2速切り替え式。一方の外装はスズキが独自にデザインしている。足が長く伸びたフェンダーミラーや丸型のヘッドライトなど、今となってはかわいく見えるが、ワイルドさを強調した意匠が随所に見受けられた。
ボディタイプは幌のみ。快適さなどは考えていなかったこの時代の象徴と言える。
写真の現車は外されているが、後部に補助席が付く計3人乗り。スペアタイヤは助手席後ろに備えられている。
エンジンは、25PSを発生する、2ストの360cc。仕方ないと言えるが、スペック的には非力だった。
一部改良でエンジン出力が25→27PSにアップした2型。ほかにもトランスミッションのシフトパターンが変更された。ドアはカーテン式からスチール枠付きの幌ドアに。
LJ10
●全長×全幅×全高:2955×1295×1670㎜ ●ホイールベース:1930㎜ ●車両重量:600㎏ ●エンジン:空冷直列2気筒2サイクル359cc ●最大出力(PS/rpm):25/6000 ●最大トルク(kg-m/rpm):3.4/5000
【第2期 LJ20(1970-1976)】
エンジンは空冷式から水冷に
エンジン自体は2サイクル360ccだが、空冷から水冷に変更されたことが初代モデル・第2期”LJ20″の大きなトピック。熱への弱さが改善されたほか、ヒーターの導入で冬でも快適に走れるようになった。外装は縦穴タイプのグリルがポイント。
また、2型はウインカーとマーカーを独立させ、1灯から2灯に変更されている。そして幌に加え、バンボディも追加されたのだ。
水冷の360ccエンジンは、空冷では実現できなかった温水式ヒーターを手に入れた。また、幌モデルは対面式の補助シートを設けた4人乗りタイプを追加販売している。
LJ20
●全長×全幅×全高:2995×1295×1670㎜ ●ホイールベース:1930㎜ ●車両重量:625㎏ ●エンジン:水冷直列2気筒2サイクル359cc ●最大出力(PS/rpm):28/5500 ●最大トルク(kg-m/rpm):3.8/5000