駆動方式によって変わる楽しさは互角。
ともに十分な戦闘力を発揮できる
モータースポーツの世界で速さを追求するとなれば、F1を代表するフォーミュラカーのようにリア(後輪)駆動が理想とされている。けれども、世界的に見てもレーシングカーがすべてリア駆動かというとそうでもない。量産される市販車をベースとするツーリングカーのカテゴリーにはFFのレーシングカーも数多く存在する。
今回のテーマとなるFFとFRの違い。まずは、この駆動方式について理解しておく必要があるだろう(過去記事:[クルマの駆動方式「FF・FR・MRってナニがちがうの?]。
4WDはさておき、クルマは前輪駆動か後輪駆動に大きく別れる。サーキットでスポーツドライビングを楽しもうという人に、自分のクルマがFF(フロント駆動)かFR(リア駆動)かを知らない人はいないと思うが、不安な人がいるとするならば、カタログやネットで諸元表を見てチェックしておこう。なぜなら、ドライビングテクニックやセッティング理論で違いがあるからだ。
頭で理解しておきたいのは、FFはハンドル操作も駆動も両方前輪が担っているのに対して、FR(MR/RRも同様)はハンドル操作は前輪、駆動は後輪と別々である点。
タイヤの減り方を見ても分かるように、FFは前輪が極端に摩耗するのが早い。「曲がる」と「前に進む」を同時に行っているので前輪の負担が大きくなってしまうのは当然のこと。
分かりやすく例えると、「曲がる」と「前に進む」を足した数を「100」としたとき、ストレートを走っているときは「曲がる=0」「前に進む=100」となる。足した数の「100」をタイヤのグリップ性能の最大値に置き換えると、コーナーを曲がるときに「曲がる=50」「前に進む=50」ならその範囲内だが、ハンドルを目一杯切りながら「曲がる=100」+アクセル全開「前に進む=100」にすると、タイヤのグリップ力が限界を超えて「曲がらない」&「進まない」という状態が発生してしまう。
FFで重要なのは、つねに「曲がる」と「前に進む」の割合をフロントタイヤのグリップ力限界付近でコントロールしてやることだ。
次に、FR(フロントエンジン/リアドライブ)。
FR(リア駆動全般)は、フロントタイヤで「曲がる」、リアタイヤで「前に進む」を別々に行っているので、FFのようなまどろこしさは少なく、ダイレクトな操作感を味合うことが可能。スポーツカーでリア駆動が好まれるのは、この操作性や応答性の高さにある。
しかしながら、発進するときやコーナーの立ち上がりでタイヤを空転させて(滑らせて)スピンする可能性はFFよりも多くなってしまう。FFでもスリップすることはあるが、その場で空転するだけ。しかし、FRの場合はハンドル操作が効くがゆえにスピンを誘発させてしまうことがある。
この特性を活かしたテクニックがドリフト。ちなみに、4WDであればFRでリアが破綻するようなシチュエーションでも、フロントタイヤが駆動してくれるのでより安定したドライビングが可能となる。
速く走るためには、FFでもFRでもこれらを意識したステアリグ操作&アクセルペダル操作が必要になってくるのは言うまでもない。上級者はこれらのドラテクとサスペンションセッティングやL.S.Dの味付けを追求し、荷重移動やトラクションのかけ方を工夫しているというワケだ。
サーキットでのスポーツドライビングでは、コーナーのレイアウトや勾配などの特性により、「FF」と「FR」で若干の有利or不利はあるかもしれないが、ドラテクやセッティングを煮詰めていけば、両方とも十分な戦闘力を発揮するので、楽しさは互角だ。