高齢化の進む日本で大活躍のクルマ
今後ますます大活躍する福祉車両の役割
国の統計によると、2010年に22.8%だった65歳以上の高齢者の人口は、15年後の2025年には30%を超え、その10年後の2035年には3人に1人が65歳以上という超高齢者社会になると予想されている。
そうなると今後ますます威力を発揮し、大活躍してくれるのが「福祉車両」だ。
一方、身体に障害を持つ人に求められる福祉車両は「自操式福祉車両」と呼ばれており、手足に障がいのある人が運転できるように補助装置を取り付け、手だけの操作、足だけの操作でクルマを運転できる。
福祉車両は乗る人と同時に乗せる人にも優しいクルマ、まして自分で運転できる楽しいクルマといえるだろう。
福祉車両の主な装置の改造作業過程
車いす昇降リフト装置(イタリア・フィオレア社製)
車いすのまま乗り降りを可能にする。最大360kg対応リフト。
回転乗降シート(スウェーデン・オートアダプト社製)
シートが乗り降りのしやすい位置までスムーズに回転し、乗り降りの負担を軽減する。
アクセルリング&ブレーキレバー(イタリア・キヴィ社製)
ハンドル位置でリングを引く、または押すことでアクセルをコントロールする装置。ハンドル右側の太いレバーを押し下げるとブレーキ操作が可能となる。
左アクセル装置(スウェーデン・オートアダプト社製)
左足でアクセル・ブレーキ操作を行なうことができる。
改造過程写真提供:ヒカル自動車工業株式会社(大阪府岸和田市)
「福祉車両の豆知識」
日本初の介護式福祉車両とは?
これをキッカケに、車いすの人々が安心して病院に出かけることができるようになり、日本全国へ普及。1980年にはその役目を終え、リフト付きバスのルーツとして市内で保存されている。
ちなみに、日本の福祉車両の始まりは1960年代中頃といわれている。
手足に障がいのある人のために補助装置をつけたクルマや高齢者施設等のワンボックスカーが登場。しかし、その多くは自動車メーカーが直接生産したものではなく、改造専門業者がその必要な部品を取り付けていた。
その後は1980年代になって高齢化が進むと福祉が重要と考えられるようになり、高齢者施設でリフト付き車いす移動車が増加。1990年代になると、施設だけではなく個人ユーザー向けに回転シートや昇降シート車に加えスロープを使った車いす移動車が登場。また障がい者が積極的に社会参加するに従って運転補助装置付き車も増加した。
結果、21世紀を迎える頃には各自動車メーカーは新型車を発表と同時に福祉車両も発表するようになりバリエーションも豊富になった。
回転シートと昇降シートの相違点
最近、介護が必要な人も介護をする人もどちらも高齢者であることが多くなってきた。そこで注目されているのが”シート”だ。
回転(スライド)シートと昇降シートは、ともにシートが外側に回転。
以前は、回転シート車が改造のし易さや手頃な価格帯もあり、介護式福祉車両全体の占める割合が大きかった。しかし、最近ではその便利さで昇降シート車が増加している。
特に背の低い高齢者にとっては地面からシートまで高さがある車の場合、乗り降りに苦労する。つまり、昇降シート車の場合は、回転したシートがドアの外側にせり出して、さらに上下に動くので膝の高さや車いすの高さまでシートが下がり、よりラクに乗り降りできる。また、介護をする高齢者にとっても負担が少ないという利点がある。
回転(スライド)シートのチェックポイントとしては、シートに深く座ることができるか、頭がルーフに当たらないか、回転時にドアにつま先が当たらないかを確認したい。
車いす移動車のチェックポイント
そこで、駐車場や自宅の出入口が広い場所とフラットであるかをまず確認。また、介護をする人がスロープやリフトをスムーズに無理なく操作できるかどうか、特に手動式のスロープタイプは介護者が車いすを手で押す体力、またスロープの角度も確認したい。
高齢者などに大きな手助けとなる介護タクシー
高齢者や障害者も利用する公共交通機関の中では、鉄道は駅や車両のバリアフリー化が大進化している。
その鉄道よりも便利なのが、目的地まで乗り換え無しで直行できる介護タクシー。一般の乗用車を使用しているので、介護福祉車両のように回転シートや車いすを乗せるためにスロープやリフトを取り付けたりすることが可能。高齢者や障害者の移動には大きな手助けとなっている。
最近では台数が多くなってきたが、まだ全体の台数が少なくあらかじめ予約をしておく必要がある。
特に家族は使用頻度で介護タクシーを決めることが重要といえよう。
福祉車両で充実したカーライフを
今後、福祉車両を開発する際は高齢や障害を特別なものとして考えるのではなく、誰もが行きたい所へ、行きたい時に気軽で快適に移動するためにはどのようにサポートすればよいのかを考えていくことがポイント。同時に高齢者や障害者がいる家族も、より充実したカーライフが楽しめるようトータルに考えていかなければならない。
日本では高齢化がさらに進み高齢者ドライバーが増加しており、また障害者にとってもクルマには尚一層の「やさしさ」が求められている。
現在、EVをはじめとする電動化(Electricity)、自動運転(Autonomous)の他に、シェアリング(Sharing)、コネクテッド(Connected)という変化時代に突入し、それぞれの頭文字を組み合わせ「CASE」と呼ばれるこの最新革新技術が、まず福祉車両に最優先に採用されるべきであるだろう。