かつて日本にあったクルマの姿も……
12月8日、アメリカ・ロサンゼルスで開催された「RMサザビーズ オークション(通称:RMオークション)」。クルマ好きなら1度は訪れたい多くの名車が展示される「ピーターソン自動車博物館」で行われ、72台のクルマが出品された。その中で高額落札された5台を紹介したい。
1967年式トヨタ2000GT
落札価格:5796万5796円(落札予想価格:5671万8000円〜7940万5200円)
新卒大学生の初任給が2万6200円の頃に新車価格238万円と当時高額な価格で販売された「トヨタ2000GT」。1967年に登場した前期型と1969年にマイナーチェンジを行った後期モデルを合わせても337台しか生産されなかった、今でも語り継がれるニッポンの名車だ。現在でも9割以上が日本に残っているとトヨタ2000GTオーナーズクラブジャパンの会長が2017年の取材時に回答している。
今回出品されたモデルは2013年にアメリカに輸出された前期型で限りなくオリジナルに近い1台。最近はピーターソン自動車博物館「モノづくりルーツ」の展覧会においてあらためて注目された個体となっている。
さて、一時期は1億円という値がついたトヨタ2000GTだが、予想落札価格を少し上回る5796万5796円で落札。驚くほど素晴らしいコンディションだが、ここ数年の相場に比べるとグッと価格が落ち着いてきているそうだ。
1972年式フェラーリ365GTB/4デイトナ ベルリネッタ
落札価格:8781万3700円(落札予想価格:8214万9450円〜9348万750円)
2017年9月に行われたフェラーリ創立から70周年を記念したオークションがイタリア・マラネロで開催された。そのときに出品された岐阜県の納屋で見つけられ、37年ぶりに日の目を見たデイトナは2億3911万6696円で落札され、話題となった。
今回出品されるモデルは、1976年までアメリカ・ニュージャージー州に保管。1980年からテキサス州のオーナーの元へ引き取られ、30年間倉庫に眠っていたが、2013年にドイツ人オーナーの手に渉った個体だ。走行距離はながらく不動だったこともあり、15691kmを表示していた。
新しいオーナーの手にわたり、フェラーリ・クラシケの認定を受けて、オリジナルボディであることが判明している。ボディはしらばく放置していたこともあり、塗装が剥がれるなど劣化していたため、元色で再塗装。2016年に現オーナーの元へ行き、2017年にはフェラーリ・クラブ・オブ・アメリカ・アニュアル・ミートでプラチナ賞を受賞している。
落札価格は、8781万3700円。コンディションもしっかりとした個体で、最近の相場から見てもとくに高額というわけでもない印象だった。
1989年式フェラーリF40
落札価格:1億7424万5100円(落札予想価格:1億3533万6000円〜1億8031万2000円)
ここ数年、もっとも高値安定の「フェラーリF40」。このF40について振り返ると、フェラーリ創立40周年を記念して1987年に発売。デビュー当時の新車価格は4500円と、それでも高額だがバブル真っ只中に登場したこともあり、日本国内では最高価格は2億8000万円の値が付いたこともあるほど。元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーさんでさえ「雨の日に絶対に乗りたくない」とコメントするほどスリリングなクルマだ。
出品されるモデルはモナコ公国のキャロライン女王の第二の夫であり、モーターボート選手のステファノ・カシラギさんが、1989年3月に購入したもの。わずか2ヶ月後には新しいオーナーの手に渡るが、刻まれた走行距離はわずか約4000km。F40は、26年間ツーオーナー目の元で大事され、パリの自動車コレクターの手に渡たり、現在のオーナーの購入した経歴だ。
ここまで聞くと、最初のオーナーが凄いだけでは? と思うかもしれないが、オリジナルのオーナーズマニュアル、工具、ステファノ・カシラギさんの署名入り販売請求書のコピーもしっかりと残されている。ここ最近では、フェラーリ・クラシケの認定を受け、オリジナルのシャシ-、エンジン、ギアボックスを保持していることも確認されている。
現在も走行距離は伸びておらず、ほぼド新車ような乗り味を楽しめるF40は、フェラーリ・コレクターにとって夢のような1台かもしれない。
1971年式ランボルギーニ・ミウラP400SV
落札価格:2億4842万4120円(落札予想価格:2億3659万4400円〜2億8142万7500円)
美しいブルーを纏う「ランボルギーニ・ミウラP400SV」は、1971年10月29日にアメリカに出荷されたモデルで1992年まで2人のオーナーに大事にされてきた。当時にしては高価なオプションだった空調が装備されており、わずか11台のミウラSVにしか搭載されていないと言われる1台だ。
その後、2011年まで日本で所有されていたが、再び米国に戻り、カスタム自動車ビルダーの「ボディ・ストラウド」によりレストア。完成後は2016年のペブルビーチコーンクール(クラシックカーの祭典)に展示し、素晴らしいコンディションを多くの人が目にしている。ミウラが欲しいと思っている方には非常に価値のある1台と言えるだろう。
1956年式フェラーリ290MM
落札価格:24億7639万8690円(落札予想価格:24億7583万6000円から29億2598万8000円)
今回のオークションでもっとも高値で落札されたのが1956年式「フェラーリ290MM」だ。と、言われてもピンとくる方はかなりのマニア。多くの方は存在すら知らないと思うが、1956年から57年の2年間、スクーデリア・フェラーリのワークスカーとしてレースに参戦。ミッレミリア(イタリア全土を1000マイル走破するレース)や第2回インターナショナルADAC1000kmで表彰台を獲得。その他にも世界有数のクラシックカーイベントに参加するなど多くのヒストリーを持っている。
出品されたモデルは、現在の所有者が2011年に購入し、フェラーリ・クラシケの手によるレストアを施されている。これだけレース出場があるなかで、フェラーリ・クラシケでは1957年12月に参戦したセブリングレース仕様に仕立て上げ、マッチングナンバーを確認した結果、エンジン・ギアボックス・オリジナルボディということがわかっている。
レストア完了後の2015年には、アメリア島で開催されたコンクール・エレガンスに参加。2016年から2017年には、イタリア・マラネロで保管されフェラーリミュージアムに展示されるなど価値のある1台として多くの人の目に触れられている。次期オーナーの元へと行った290MMの可能性は無限大。サーキットで見かける日を待ち遠しい。