ボディがタイヤやサスの性能を支えている
走行中のクルマは、加速Gや減速G、コーナリングの横Gや空気の抵抗、そしてタイヤから伝わる路面からの入力など、さまざまな方向から力が加えられ、それによってボディが捻られたり、曲げられたりする。これらに対する応力を「ボディ剛性」という。
国産車は1980年代後半、日産の901活動(1990年までにシャシー性能世界一を目指す)の頃から、ハンドリング性能を高めるには高剛性ボディが必要という認識が高まり、ドイツ・ニュルブルクリンクでの実走テストやコンピュータを使ったMRS(マルチロードシミュレーター)といった動的剛性の解析システムを駆使して、剛性の高いボディ作りに力を注いできた歴史がある。
ボディ剛性が高くなると何がおこるかというと、まずサスペンションが設計通りきちんと動くこと。もうひとつは、タイヤからのインフォメーションが正確に伝わるようになること。さらに操作に対するボディの位相遅れ(左右の切り返しなどにクルマがついてこなくなる)も軽減できる。反対にグニャグニャのボディでは、インフォメーションが乏しく、操作も正確に車体側に反映されない。タイヤのグリップが高かまったり、サスペンションが固くすると、相対的にボディ剛性は足りなくなる。
また衝突安全のことを考えると、クラッシュ時にある程度ボディはつぶれやすい構造が望ましく、「強度」があり過ぎるのも考えもの……。そのうえ前記の通り、ノーマルではバランスのとれたボディ剛性でも、ハイグリップタイヤを履いたりサスペンションをチューニングしたりすると、もっとボディ剛性を高めたくなる。そのためにアフターパーツとして、各種の補強バーなどが用意されている。
最近のスポーツカーは、メーカー純正のタワーバーがはじめから入っていることからもあり、その効果は折り紙つき。左右のサスペンションのロアアームの取り付け部をサポートするロアアームバーも、サスの取り付け部の剛性アップを狙ったもの。
フロアトンネルを跨ぐようにつないで、フロア全体の剛性を確保するロアブレースバーも各種あるし、前後のモノコックの先端部分を補強する、クロスエンドバーもスグレモノ。これらのパーツを上手に使えば、シャキッとしたボディが手に入るし、古いクルマのリフレッシュや新車ならボディのヘタリの防止に役立つ。
一方で、やたらと補強バーを入れても重量増やコスト、バランス面でのデメリットもあるため、ツボを押さえた効果的な補強を上手にやるのがポイントだ。
というわけで、運動性能が高くなればなるほどボディ剛性は必要。メーカーもボディ剛性のアップに力を入れているが多くの場合は、ボディ剛性アップと軽量化はトレードオフの関係にあり、そこが頭の痛いところだ。
近年は、フロントガラスの接着剤の硬度を高めてボディ剛性を高める手法も登場している。