エンジン停止中でも使用OK!!
換気不要で後付けもできる
キャンピングカーや車中泊仕様車を愛用する方々は、冬は「FFヒーター」があると車内が暖かく快適に就寝できると言う。
きっと、このFFヒーターを知らない方は、灯油やガスを燃料として使う家庭用のファンヒーターだと思ってしまうだろう。
車載用のFFヒーターとは、車外に強制吸排気を行なう燃料燃焼式の暖房装置のこと。具体的には車外から取り入れた空気で燃焼室内で燃料を燃やし、燃焼室の周りにある暖房用ボックスに車内の空気を取り入れて、温まった空気を放出するという仕組み。
燃焼室内で発生した排気ガスは専用マフラーから強制的に車外に放出させるので、使用中でも換気の必要が無く、車内の暖まった空気が再び暖房用ボックスに戻るサイクルとなるので、クリーンで効率的に空気を温められるというわけだ。
燃料はガソリン、軽油、LPガス。多くはクルマの燃料タンクに給油ホースを取り付けてFFヒーター本体に自動的に燃料供給を行うので、クルマの燃料タンクに燃料さえあれば作動し続けられる(燃料1リッターあたり6〜10時間稼働)。
また、キャンピングトレーラーなど燃料タンクの無い車種では、専用の燃料タンクを取り付ければ使用可能。専用タンクとFFヒーターがあれば、テントキャンプでも、強制吸排気のホースとマフラーをテント外に設置すれば使用できる。
上の写真は、一般的なキャンピングカーに設置されている温度調整ダイアル(アナログ式)。下は、日産 NV200のセンターコンソールのリア側に設置したデジタル温整装置と温風吹き出し口。
実際に日本の南極観測隊のトレーラーにも設置されていて、氷点下50℃近い環境でも活躍。ただ、装置を稼動させて温度コントロール装置などを作動させるために電気が必要で、多くの機種はDC12Vか24V(いずれも車載バッテリーの電圧)仕様なので、メインバッテリーの消耗を防止するためにサブバッテリーから電気を供給するケースが多い。
燃焼発熱量によりさまざまなサイズがあるものの、乗用車ベースの車中泊仕様車や、一般的なキャンピングカーならば最も小型なサイズでOK。電力消費量は12V仕様で5〜6A程度だ。
キャンピングカーで寝室と居室が分かれている車両は、本体1台でホースを分岐させて複数の吹き出し口を設けることが出来るので、便利で効率的。また、車中泊用の二段ベッド仕様車では、一つの吹き出し口に家庭用温風ヒーター用の省エネダクト(こたつホース)を設置して、二段ベッドの足元に温風を送り込む工夫をしている人もいる。
ポップアップルーフ仕様車(三菱・デリカD5)で温風吹き出し口にダクト(こたつホース)を付けて寝室のポップアップルーフに温風を送っている方の使用例。
このように効率的で省エネな暖房器具だが、本体価格は20万円前後と高価なのがネック。基本的に燃料タンクに穴を開けて燃料供給用ポンプなどを取り付けるので、設置はメーカー認定の資格を持つインストラクターが行なう必要がある(インストラクター以外の設置した場合は保証対象外となる)。工賃は高く、総計で25万〜30万円になってしまう。
最近は中国製で自家装着タイプの3万〜5万円の製品が通販などで販売されるが、燃料タンクに開けた穴からガソリンが漏れるトラブルが頻発しているので注意が必要だ。
また温調システムにより価格が変わり、一般的なタイプはダイヤルによる温度をコントロールする形式。さらにデジタル式温度表示で温度を微妙に変えたり、ON/OFFタイマー機能などがあるデジタル型もある。こちらは価格が数万円高くなる。
車種によってはクルマから燃料タンクを外さなくては設置できないタイプがあり、さらに工賃が数万円高くなってしまうことも。このように暖房器具としては高価な製品となるが、2〜3年ごとに本体のオーバーホールを行っていれば10年以上使い続けられるので、ウィンタースポーツで車中泊する方や、冬の早朝から釣りをする方、ウィンターキャンプ派には無くてはならないアイテムとなっている。
FFヒーターの本体。左側から車内の空気が吸入され、左側から設定温の温風が出る。床下に外気吸入と排ガス放出ホース(基本的に金属製)と燃料供給装置がある。
中には真冬でも短パンTシャツで車中泊をしたという猛者もいるが、車内の空気だけを温める装置なので、車内の乾燥や温度差による車外結露には要注意。
また、スキー場などの降雪地の駐車場泊では、車外の吸排気口が雪に埋まると自動停止したり、クルマの周囲が雪に囲まれると排気口からの排気ガスが床下から車内に侵入するケースもあるので、そちらも気をつけていただきたい。