トレッドブロックの変形を抑える心がけとは
スタッドレスタイヤのトレッドゴム(=コンパウンド)は極低温でもゴムの柔軟性が発揮できるように作られているので、その分ゴムが柔らかく出来ています。
ですからブレーキをかけるとトレッドブロックが後ろ側に倒れ、ブロックにある細かい溝「サイプ」や、ブロックの角「エッジ」もブロックの前側が削れてしまうわけです。加速してもカーブを曲がったりすれば、ブロックの倒れる方向が変化するだけで、同様のことが起きています。
だからといって無暗にブレーキを弱くしたり、ノロノロ走るする必要はありません。ちょっと運転に気をつけるだけで、スタッドレスタイヤの摩耗はグッと抑えることができます。
ブレーキは緩やかに効かせ始めること
最近のスタッドレスタイヤはほとんど3Dサイプが採用されているので、ある程度ブロックが変形しても接地面が綺麗に路面をとらえ、エッジが立ちにくくなっています。
そのようになっているので、ポイントは、ブレーキのかけ始めとブレーキング中の減速Gの変化を少なくすること。接地面がなるだけ一定の負荷で路面をとらえるように気を付けます。
極端なことをいえばポンピングブレーキのように、ブレーキペダルを踏む力を大きく変化させないことがポイントです。
カーブを曲がる時を考えてみましょう。タイヤが曲がる力を発生するメカニズムは、ハンドルを切り→タイヤが向きを変えブロックが変形し→タイヤの向きとタイヤの進行方向にズレが生じることで起こります。これをコーナリングフォースといいます。
つまりクルマが曲がるときは、いつもタイヤの向きと実際のタイヤの進行方向にいつも若干の滑り(スリップアングル)が生じているわけです。
ポイントは、このスリップアングルが過大にならないように運転することです。
ハンドル切り始めは指の幅一本分をゆっくり回す
具体的にどのようするかというと、ハンドルをカーブの手前からじわっと切り出します。とくに切り始めは、指の幅一本分を意識的にゆっくり切り始めるようにします。某自動車メーカーのテストドライバーは、ハンドルを操舵するときは指の皮が動くことを意識するくらい繊細と言っていました。
こうすることでヨー(タイヤ局部ではなく、クルマ自体が曲がろうとする動き≒Z軸モーメント)がスムーズに発生し、比較的少ないスリップアングルで旋回することができます(操作としてかなり難しいですが…)。
この時の注意点は、ハンドルを切ったり戻したりしないようにすることです。じわっとハンドルを切り始めた後は、スーッと切り足していきます。
こんな操作をすると不思議なくらいクルマがスイーッと曲がり、ハンドル舵角も少なくて済みます。
これができるようになると、タイヤのエッジの痛みが驚くほど少なくなります。
また、この運転操作を雪道で行えるようになると、カーブをよりスムーズに走れるようになるし、路面からの手応えがはっきりつかみ取れるようにもなります。
摩耗を抑えるために高速道路は制限速度厳守!
いずれにしても、タイヤのトレッド面の痛みをなるべく軽減するイメージで走らせていると、3シーズン、4シーズンとタイヤの性能を大きく落とすことなく使うことができるわけです。
ただし、コンパウンドの経年劣化はこれとは別の話です。一般的にスタッドレスタイヤの寿命は4~5年と言われていますが、タイヤの保管方法でも、コンパウンドの状況は大きな差が出てきます。
また、速度レンジがQR規格のスタッドレスタイヤの許容速度は160km/hとなっていますが、120km/hを境に摩耗が一気に早くなることも付け加えておきます。当たり前のことですが、高速道路では制限速度を以下で走るようにしましょう。