ドライカーボン製ボディキットをはじめ、
多彩なチューニングメニューを披露
ホンダは、2月9日からインテックス大阪で開催されている「第23回 大阪オートメッセ2019」に出展。ホンダ車のスポーツカスタマイズを手がける「無限」も3台を展示しているが、なかでも注目したのはシビックタイプRをベースにした『MUGEN RC20T Package Pre Production MODEL』(以下RC20T)だ。
その詳細について、M-TEC(無限)の野田和宏氏に話を伺ってきた。
このクルマは2018年の東京オートサロンに出展したコンセプトモデル「MUGEN RC20T CONCEPT」を市販化に向けて改良を加えたもの。エクステリアではドライカーボン製のエアロボンネット、フロントバンパー、フロントリップスポイラー、サイドスポイラー、ミラーカバー、そしてリアアンダースポイラーにリアウイングを装着。これらを装着することで、ダウンフォースはベース車と比較して約3倍、Cd値(空気抵抗)についてはノーマルとはほぼ変わらない結果となっているそうだ。
さらにこのボディキットはサーキットでの連続走行を可能にするための冷却効果を高める造形が盛り込まれているが、この点についてM-TECの野田氏は「ただ冷やすのではなく、エンジンのポテンシャルは効率よく発揮できる水温と油温を全力の連続走行においてもキープできることを目指して作ったもの」という。こうした考え方はさすが「レース屋」というというものだ。
このほか、RC20Tにはエンジンを精密に組み直し、ZF製サスペンションキットやブレンボ製6ピストン鍛造キャリパー、20インチの鍛造ホイールなどで武装しているが、気になるのは販売方法についてだ。
無限では過去にコンプリートカーとしてFD2シビックタイプRをベースにした「MUGEN RR」を発売した経緯がある。「RC20Tも台数限定のコンプリートカー販売か」と思いきや、こちらはベース車に改造を施す「カスタマイズメニュー」として発売を予定しているそうだ。
つまり、現在シビックタイプRに乗っている人もパッケージを購入することでRC20Tに変身できる可能性は高いと言うこと。ただ、パッケージの数量は限定されると予想される。
発売時期は2019年夏頃を予定。価格は未定だが、ボンネット、バンパー、フェンダーなどのドライカーボンパーツにエンジンの組み直し、LSDやハイスペックなサス、ブレーキ、ホイール、さらにインテリアを含めると、シビックタイプRの新車価格以上の値付け、しかもそれを大きく超える設定になると思われる。
そうなった場合は気軽に買えるものではない。でも、シビックファンや無限ファンは当然、欲しい気持ちはあるので「なんでそこまで高額になるまで作り込むのか?」と嘆きにも似た疑問を持つ人もいるだろう。
だが、ここについて野田氏からは「無限はシビックのレースカー作りから会社の歴史が始まりました。だからシビックに関してはとくに思い入れが強いのです。MUGEN RRが作られたのもそういった熱い気持ちがあった。高いポテンシャルを持つ現行シビックタイプRにも同様のこだわりをつぎ込んだ結果、この仕上がりになったのです」という。
つまり市販時の販売価格を気にして開発・製作されたのではなく、シビックに特別のこだわりを持つ無限が現代にやれることをすべてつぎ込んだ”スペシャル”ということ。
これをどう取るかは人それぞれだが、ホンダ車のレース活動においてセミワークス的な無限が、特別な思いを持って妥協なく仕上げたシビックには間違いなく別格の価値がある。そこに共感できるシビックファンにとっては性能、価格を含め納得の一台であることは間違いない。
また、現行シビックタイプRはひょっとすると内燃機のみを積む最後のモデルかもしれないだけに、こういった究極仕様が作れるのもこれが最後かも。そう思うとRC20Tはいっそう魅力的に見えてくる。
なお、ブースにはRC20Tのコンセプトを受け継いだ「MUGEN CIVIC TYPE R Prototype」も展示。こちらは、ディーラーでも購入できる用品販売を前提としたものだ。大阪オートメッセ2019の無限ブースでは「MUGEN RC20T Package Pre Production MODEL」の他に新型インサイトの用品装着者も展示。
また、ブース正面には無限が制作してきたレーシングマシンやレーシングバイクのパーツを組み合わせて作ったモニュメント「神眼」も展示されている。