王道のレストア方法とは真反対のアプローチ
インテックス大阪で開催された大阪オートメッセ2019にて、オリジナルを忠実に再現する旧車レストアの王道に対し、まったく違う方向からアプローチする3台のスカイラインを発見した。カスタムオーディオの名手が提案する、実用的かつ個性的な旧車のリメイク術とは?
依然として高い人気を誇る旧車ブーム。ベース車両の数が減るのに比例して価格は高騰し、純正パーツの入手も困難になるいっぽうだ。背景にはオリジナルこそ至上とするレストアの王道ともいうべき流れがあり、確かにそれも楽しみ方のひとつであることは確か。しかし現実には資金や時間には限りがあるし、好きなクルマをいつでも気兼ねなく乗りたい、と考える人も多いはずだ。
そんな層に注目して欲しいのが、大阪府の「イーストボール」が出展した通称名ハコスカ(C10型)/ケンメリ(C110型)/ジャパン(C210型)の歴代の日産スカイライン。同社は元々はオーディオやセキュリティを得意とするプロショップだが、オーナーは昔からアメリカの旧車も大好きだったという。純正というオリジナルに固執しすぎない現地の旧車カスタムのテイストを国産の旧車に活かせないものか、と考えたのがそもそもの始まりだったそうだ。
オーディオのカスタムインストールは内装の加工を伴うケースがほとんどで、そのあたりのクオリティには絶対的な自信がある。展示した3台はシートの生地を張り替えるだけじゃなく、センターコンソールやドアパネルはワンオフ製作。必要に応じて最新のオーディオやタブレットを装着できるようデザインし、利便性や快適性を向上させている点も面白い。純正にこだわらないからこそ、オーナーの個性を出しやすいのもメリットといえるだろう。
例えば「ハコスカ」は車高調式サスペンションではなくエアサスを使い、エンジン始動はプッシュ式スタートへ変更。「ケンメリ」はエンジンルームの配線を徹底的に間引きし、バッテリーを室内のシート下に移設することで、非常にスッキリしたルックスに仕上がっていた。
いずれも柔軟な発想と視野の広さから生まれた、旧車カスタムの本流からは外れたスタイル。展示車両はすべてアウディ純正のナルドグレーと呼ばれる落ち着いた色にオールペン済み。ヨーロッパ車のカスタムでは人気の色で、こうやって眺めると国産の旧車にも意外なほど似合う。
気になる費用はベース車のコンディションや、どこまで手を加えるかによってさまざま。また、イッキに仕上げるよりも「今回はシートで、次は全塗装」と、時間をかけて完成させるユーザーが大半とのこと。レストアとは違った楽しみを感じながら進めていくのもいいだろう。