高級グランツーリスモが右ハン仕様のドリフトマシンへ
大阪オートメッセ2019の会場で注目を浴びていた、ライムグリーンカラーに彩られたフェラーリ550マラネロ。ドリフト競技「D1グランプリ」に参戦すべく、広島県の「MMM」が中心となって開発が進められてきたスーパードリフトマシンだ。
高級グランツーリスモをドリフトマシンに仕立てたことも驚愕なのだが、搭載するエンジンがなんと日産GT-Rの3.8リッターV6ツインターボに換装されていたことも驚き。
フェラーリ550マラネロは1996年から2001年まで生産された、フェラーリ最高峰のFR(フロントエンジン後輪駆動)のグランツーリスモ。このドリフトマシンは骨格こそ550マラネロを使用するが、その他のパーツは全面を刷新。日本のチューナー技術が細部に盛り込まれ、まさに日伊合作のモンスターマシンに変貌していた。
注目すべきはエンジンで、オリジナルの485馬力を発揮する5.5リッターV型12気筒エンジンを取っ払い、日本の至宝である日産R35型GT-Rの3.8リッターV型6気筒ターボエンジン(VR38型)へ換装。そこへ「HKS」の排気量アップキットが組み込まれ、4.3リッターまで拡大することで、パワーはなんとオリジナルの約2.5倍となる1200馬力まで引き上げられている。スペシャルなエンジンは、ハンドリングのバランスを考慮して可能な限り後方にマウントされた。
「タービンは、GCG製の大型のシングルタービンに変更しています。その理由は、ツインターボでは低速からトルクが出過ぎるため、少し踏んだだけでもホイールスピンを誘発。安定した姿勢保持が要求されるドリフト競技には不向きなんです。VR38エンジンを搭載する競技車輛としては初の試みですね。また、シングル化することで低回転のトルクを落として、高回転でのパワーを引き出す特性としています。スロットルはレクサスLSの100φを流用しました」とは、MMMの三貝浩士代表。
車体も一部をパイプフレーム化するなど、圧倒的なパワーを受け止められるように補強済み。ラジエーターは、重量配分の最適化を行なうためにトランク内へ移設されていた(D1グランプリの参戦マシンでは一般的)。
さらに驚くべきは、ドライバーが右ハンドルに慣れていることに対応して、オリジナルのマラネロで日本仕様には存在しない右ハンドルになっている点。純正ダッシュボードを左右反転し、ドライカーボンで成型したという。
エクステリアパーツも軽量なワンオフパーツに交換しつつ、10.5J×20インチのホイールとワイドタイヤを履きこなすため、前後のフェンダーは左右で約100mm拡大。それでいて車重は1690kgから1100kgまで大幅なダイエットを達成させた。その他、足まわりや内装なども含めて、ドリフト競技に勝つためのカスタマイズは多岐に及ぶ。
オリジナルに拘らず、日本の技術を駆使して大胆にモディファイされたフェラーリ550マラネロ。平成最後に誕生したモンスターマシンは、2019年6月29日(土)、30日(日)に茨城県筑波サーキットで開催される「D1グランプリ」に参戦を開始する。