公称出力は670馬力
オリジナルの905/905 evo1に比べると、随分とモダンなレーシングカーらしい、コンサバなルックスとなった905 evo1 bis。それでも、ドイツやイギリスのライバルに比べると、紛うことなきフランスの薫りが漂う。
905 evo1 bisをチャンピオンへと導く、文字通りの原動力となったSA35-A2エンジン。905/905 evo1が搭載していたA1は、このプロジェクトのために新規開発されたユニットで3.5リッターの80度V10は、当然将来のF1進出をも見越していたはず。A2エンジンはA1エンジンをブラッシュアップさせたもので、公称出力は670馬力だった。それにしても新世代グループCは、幅広のモノコック(バスタブ)を別にすれば、まるでフォーミュラ・マシンのように映る。
2座席とは言うものの、コクピット両サイドに設けられた空気の“通り道”が広く設定されているから、意外に狭くなっている。窓枠に囲まれたサイドウィンドウのみが開閉するタイプゆえ、コクピットへの乗り降りは大変そうだ。それにしてもロールケージのフロントバーに取り付けられているバックミラーが微笑ましい。
ノーズの先端に追加された1枚モノのフロントウイング。905/905 evo1で不足気味だったフロントのダウンフォースを稼ぎだすための策だったが、同時にドラッグ(空気抵抗)も増えることになり、正に痛し痒し。結局、他のサーキットで行われるスプリントではそのままで、ル・マンではこれを外したドラッグレス仕様で戦った。
コクピット両サイドに設けられた空気の“通り道”。グループCのパッケージを論理的に組み立てて行くと当然の帰結だ。グループCの後継となる現在のLMPでも、ボディサイド部分の考え方は基本的に同じ。ただしフロントの処理はまったく異なっている。空力を追求していった結果だが『現在のマシンは風洞(空力)がデザインする』はけだし名言だ。
90年のWSPC第8戦・モントリオールにデビューを果たした、シリーズの“長兄”となる905。グループCのレーシングカーと言うよりも、まるでコンセプトモデル。ル・マン・サーキット博物館で2012年に撮影。
これはプジョー博物館で出逢った905 evo1 bis。展示プレートには『Peugeot Type 905 Evolution 1.7』とあり、これが正式名称とも思われるが、世間一般では『evo1 bis』の方が通りがいい。あくまで個人的な印象だが…。
プジョーが93年シーズンに向けて開発していた905 evo2。一般的には“Supercopter”の愛称でよく知られている。まるでフォーミュラカーのようなノーズと、全く別体でそれぞれのフロントホイールをカバーする左右フェンダー。近年のLMP1にも通じる空力理論でまとめられたデザインだ。ただし美しいとは言い難いのも事実!