次期モデルも標準仕様とカスタムの2タイプ
自動車メーカーは、新しいクルマを発売するまでに社内のテストコースに限らず、最終段階になると一般道における実走試験を行う。もちろん、発表前のクルマだから車種が限定されないようにするため、細かいデザインを見えにくくするため、唐草模様のラッピングを施すなどの偽装を施してくる。
そのような一般道で走行試験はさほど頻繁に行われておらず、偽装したテスト車両に出会うことは非常に希なこと。ところが、偶然にも2月下旬寄った夕暮れ時の首都高湾岸線パーキングエリアで、偽装ラッピングを施した2台のテスト車両と遭遇。写真に収めることに成功した。
その2台は「宇都宮」と書かれた仮ナンバーを装着しており、これだけでも該当する自動車メーカーは栃木県内に研究開発施設を持つ日産かホンダに限られる。さらに伴走車なのか、同じ宇都宮の正規のナンバーを装着したホンダN-BOXが横付けされていた。このようなことからも、まず間違いなく、偽装された2台は、ホンダが発売前の公道テストに駆り出した車両だ。
N-BOXを基準にボディサイズを比較すると、偽装された2台はN-BOXと長さ・幅は同程度ながら、明らかに背が低い。つまりは軽ワゴンということだろう。全くのニューモデルという可能性もゼロではないが、ホンダはすでに軽自動車を7車種もラインアップしており、これ以上の車種追加は考えにくい。となると、既存モデルのフルモデルチェンジと考えるのが妥当だろう。
さらに幸運なことに、リヤドアを開ける瞬間を目撃することができた……ヒンジドアだ! モデル末期に差し掛かっている、リヤドアがヒンジドアの軽ワゴンは、2012年11月に登場したN-ONEと、翌13年11月デビューのN-WGN、14年12月に発売されたN-BOXスラッシュの3車種だ。単純に発表順から判断すると、N-ONEの次期モデルである可能性は高い。
しかし改めて、偽装された2台のテスト車両のシルエットを眺めてみるとボディ形状は至ってボクシー。それどころか前後ランプやグリル、左右のウインドウの形状は清々しいまでに四角い。N-BOXスラッシュのチョップドルーフ風でもなければ、N-ONEのように丸みを帯びたN360のレトロフューチャー風でもない、視界と室内空間の広さを重視した設計だ。
ここまで分析すれば2台のテストカーの正体は、新型N-WGNといっても間違いないだろう。そのフォルムからもそうだが、導光チューブを縦に2本並べた細めのLEDリヤコンビランプはリヤハッチの開口部を広く取る実用性を考慮したデザインと推測される。つまり、ここで、N-ONEやN-BOXスラッシュという趣味性の高いモデルという選択肢はなくなるわけだ。
偽装されているから細部のデザインがわかりにくいが、1台にはルーフスポイラーやサイドステップが装着されているうえ、フロントのバンパーやグリル、ランプ、もう1台の車両と別物だ。しかも、スポイラーを装着しない車両が14インチらしきスチールホイールを装着するのに対し、スポイラー付きは15インチであろうアルミホイール。ルーフにはドルフィンタイプのアンテナも装着されている(もう1台の車両は通常のポールタイプアンテナ)。現行モデルのグレード体系を例に取れば、スポイラー付きが「カスタム」となる仕様だ。そしてリヤスポイラーなしが標準仕様であることは間違いない。
もう少し細部をチェックすると、テールランプの上下が現行車より短いこともあり、カスタムのリヤウインドウが斜めにラッピングされ、標準仕様がスクエアな形状に偽装されていることから、何らかのデザイン差を設けている可能性はある。
また、リヤドア後方のピラーがかなり垂直になっていることから、ドア開口部は頭上スペースは拡大。リヤシートへのアクセス性は、確実に向上している。このあたりから次期N-WGNは、ファミリーユースを意識していることが考察される。
さて気になる登場時期だが、次期N-WGNは早ければ年内に、現行モデルよりもシンプルかつ親しみやすいスタイル、そして広いな視界と室内空間を得て、我々の前に姿を現すことだろう。その時が今から楽しみだ。