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エンジン始動は神頼み! 昭和のクルマが装着するキャブレターとは

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TEXT: 片岡英明

定期的なメンテナンスも当たり前の儀式

 キャブレターは故障しやすいが、現在のインジェクションのような電子制御システムに比べると構造がカンタンなので、メンテナンスしやすいのも特徴。

 しかし、機械的にガソリンを送る仕組みのため、走行状況によっては息継ぎするような症状を発生することもある。とくに苦手なのが、気圧や温度の変化。標高差がある場所や温度が大きく変わってしまうなど、場所や気候に性能が左右されやすい。気候や点火系の汚れなどによってエンジン不調に陥りやすいのである。

 そして高性能モデルは、「ソレックス」や「ウェーバー」製などのキャブレターをツインやトリプルに装着。外気温や気圧によって調子を崩しやすく、シングルタイプよりもシビアだったのだ。そのようなこともあって、エンジンの実力を余すところなく引き出すためには、走る状況に応じてキャブレターをマメに調整する必要があった。

 ガソリンを最適なタイミングで霧状に噴射させるために、メインジェットやエアジェット、ポンプノズルなど、ジェットと呼ぶパーツのセッティングが重要になってくるし、点火プラグの焼け方にも注意を払わなくてはならなかったのだ。

 それゆえ、当時は標高が高い山岳路ではジェット類などを交換し、セットアップし直した、なんていう強者も決して珍しくはなかった。

キャブレターはクルマ好きの管楽器だった

 そのような手間がかかるキャブレターではあるが、ドライブフィールは感動モノ。シリンダーの手前にキャブレターの空気の通り道があり、これが狭まっているからアクセルを開けると快音を放つわけだ。とくにソレックスやウェーバーといった大口径のキャブレターを連装したクルマのエキゾーストノートは、高回転まで回すと耳に心地よかった。

 また、インジェクションのような滑らかさは期待できないが、荒々しさや息継ぎまでもがマニアには魅力と映るのだ。今は、電子制御燃料噴射装置だから、寒冷地や標高の高いところでも一発始動が可能だ。暖機運転もほぼ必要なくなっている。便利な時代になったものだ。

 ちなみに日本の自動車からキャブレターが消えたのは2002年。三菱の商用バン、リベロカーゴが最後の装着車だった。オートバイはその後もキャブレターを使っていたが、2006年から排ガス規制が強化され、電子制御燃料噴射装置が多く使われるようになった。

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