今なお人気のモデルが多数
いま考えると、1990年代はじつに魅力的なスポーツカーが溢れていた。そうした中でスカイラインGT-R、ホンダNSX、マツダ(ユーノス)ロードスターは、別格の殿堂入り的存在だ。今回は冒頭に書いた3車種以外の90年代を代表するスポーツカーをピックアップしてみよう。
ホンダS2000
本田技研工業創立50周年記念として開発されたホンダS2000は、90年代最後の年である1999年に登場。
ホンダとしては29年ぶりのFR(フロントエンジン後輪駆動)スポーツということで専用シャシー、専用ミッション、専用エンジンと、今では考えられない専用尽くしのゴージャスなクルマだった。
2リッターNAエンジンの傑作、F20C型は、量産エンジンというより、レーシングエンジンのH22A改のデチューン版。コンパクトな直4で、フロントミッドシップ(FRだが、じつは微妙にリアヘビー!?)。
剛性と重量バランスを優先した結果、ハイボーンXフレーム構造で車内が狭く(居住性を犠牲にして運動性を高めるのは、スポーツカーの王道)車重が意外に重い(同年デビューの4WDターボの三菱ランサーエボリューションⅥのGSRと10kgしか変わらない)。ダイレクト&クイックさにこだわり、ステアリングのテレスコピックやチルト機能が装備されなかったり、リアサブフレームがメンバーブッシュを介さない直付けなため“タメ”がないナーバスな走り。なによりサブフレームがヘタるがネックだった。
また、荷物がマツダ・ロードスターより載せられず、オープンカーなのに解放感が乏しい。ビキニの水着を期待したのに、ビーチバレーウェア(ビーチブラトップ)になってしまったと評されたり、いくつか欠点も見受けられるが、アスリートとして超一流なのは間違いない。
S2000が2万台しか売れなかったのは、残念でならない。中古車が高いのも当然の名車だ。
マツダRX-7(FD3S)
どんなサーキットでもインからライバルを刺せる世界最速のハンドリングマシンを目指して開発された、マツダ入魂のスポーツカー、RX-7。マツダの意地でパワーウエイトレシ5kg/ps以下を達成し、ポルシェ以外で最初にシーケンシャルツインターボを実用化。
フロントミッドシップで、前後重量配分は50:50で、軽量化のためにアルミ部品率は33%を達成。1991年の登場から2002年の生産中止まで、5度のアップデートが図られ、Ⅰ型からVI型まで、どんどんパフォーマンスが向上していった。
そういう意味では、日産R35型GT-Rなどが掲げる「毎年進化するイヤーモデル制」の元祖的な一台でもある。走り屋に愛された90年代のクルマといえば、このFD3Sは外せない一台だ。