ブランド作りに必ず必要
「大阪オートメッセ」のようなクルマ関係のイベントで大きな目玉になるのが、モータースポーツ車両だ。煌びやかな外観とスタイルは自動車産業の”華”にふさわしい。また、これだけ多くの予算を使い、競技するというジャンルは自動車以外に存在しない。確かにテニスや野球、サッカーといった競技は年収30億円以上になる選手がたくさん存在する。
もちろんモータースポーツの場合、規模からして違う。F1などトップ選手の年収で30億円以上。その上、車両開発予算や年間参戦費用など三桁の億になる。もちろんサッカーや野球の「競技場」よりさらに規模の大きいサーキットも必要で、こうなると気になるのは「そんなにお金を掛けてモトが取れるのか?」ということ。無駄使いのようにも思えるのだが……。
例えばトヨタでいえば、WECとWRCという2つの世界選手権に出ている他、アメリカでは乗用車とトラックのナスカーに参戦。日本だとSUPER GTとスーパーフォーミュラ、ダカールラリーなど様々なジャンルに出場している。TMGなど海外の開発拠点維持費など考えれば、1000億円近く投じているのではなかろうか。
ホンダもF1を始め、WTCRという世界選手権に参戦。アメリカではインディカー、日本のスSUPER GT、スーパーフォーミュラ、そして2輪も世界GPから世界トライアル選手権まで幅広く出場しており、トヨタに匹敵する予算を投じていると予測できる。マツダや三菱自動車などは、経営陣がモータースポーツに意義を感じず、予算ゼロだ。
ちなみに日産とルノーと三菱自動車のアライアンスは、効率がいいのかF1とSUPER GTくらいしか参戦していない。トヨタとホンダはモータースポーツの予算をカットすれば、新型車1〜2車種分の開発予算を確保出来ることだろう。ということを100%認識した上で、トヨタとホンダはモータースポーツ活動を積極的に続けているわけだ。
そろそろ結論を出そう。短期的に評価するなら、モータースポーツを休んでも問題ないと考える。ただし、長い目で評価すると、モータースポーツなしで自動車メーカーのブランドは作れない。現在、全くモータースポーツに参戦していないメーカーも、過去に素晴らしい歴史を持っている。感性の鈍い現在の経営陣が「ムダ使い」と判断しているだけだ。
確かにモータースポーツ参戦費用を効果で判定しようとしても難しい。けれど自動車メーカーのブランド作りに必ず必要なものだと思う。競技に使われないゴルフクラブや、自転車、スキーグッズは良いモノを作ったって高く売れない。現在モータースポーツを休んでいるメーカーも、遠からず参入しないとブランドイメージを使い果たすことだろう。
最近ではトヨタが様々なジャンルのモータースポーツで大暴れしている。今年に入ってもダカールラリーで総合優勝。WRC第2戦のスウェディッシュは圧倒的な強さを見せ優勝。そしてナスカーのデイトナ24では1〜3位フィニッシュという信じられないリザルトを残している。日本ではおなじみとは言えないが、上手にアピール出来たら一段と尊敬されるブランドになると思えるのだ。