ハンドリングや燃費の向上に恩恵あり
最近のモデルチェンジでは軽量化についてアピールすることが増えている印象がある。スーパースポーツではアルミを使うのは当たり前で、カーボンへの置換もどんどん進んでいる。量産モデルでもハイテンと呼ばれる高張力鋼板を使用することで、ボディ強度と軽量化を同時に追求しているケースは少なくない。そんな軽量化には、どんなメリットがあるのだろう。そして、いいこと尽くめなのだろうか。
スポーツカーの分類として「ライトウェイトスポーツ」というカテゴリーがある。比較的、小さめのボディに小排気量エンジンを組み合わせることで軽量さをパフォーマンスに利用したスポーツカーのことだ。ロータス・エリーゼやマツダ・ロードスターが、ライトウェイトスポーツの代表格といえる。
その走りは、まさに軽快なのが魅力。小排気量エンジンゆえに絶対的なパワーはたかが知れているが、ボディが軽いので加速性能は十分であるし、ブレーキングでは制動距離が短くて済む。さらに軽いから慣性モーメントも小さく、コーナリングが気持ちのよいスポーティカーに仕上がるというわけだ。
レーシングカーでも超軽量なフォーミュラ1と空力に優れたル・マンカー(LMP1)を比べると、最高速ではLMP1が秀でていても、コーナリング性能ではF1が勝る。軽さというのはパワーではカバーしきれない価値なのだ。
そうしたパフォーマンスだけでなく、軽いということは動かすためのエネルギーが少なくて済むわけだから燃費にも効いてくる。軽量素材の象徴ともいえるカーボンを多用するのはスポーツカーだけではない。電気自動車であるBMW i3がカーボンボディを採用しているのは、まさに軽くすることでEVのネックである航続距離を伸ばすためだったりする。
さらに軽いことはステアリング操作に対するレスポンスにも貢献。スポーツカーでなくともプリミティブなコンパクトカーや軽自動車が、存外にキビキビと走るので楽しいと感じるのは、まさに軽いことによるメリットというわけだ。たとえば、スズキの軽スポーツ、アルトワークスの車重はFF・5MT車で670kgと非常に軽い。その走りに軽快感を覚えるのはスペックからも当然なのである。
では、軽いことは絶対正義なのかといえば、そうでもない。デメリットもある。まず乗り心地については、ある程度の重量があったほうが有利だ。軽量ボディでは路面からの入力によってバタバタしてしまうようなシチュエーションでも、重量級モデルであればどっしりと落ち着いた挙動を見せ、しっかりとした乗り心地を味わえる傾向にある。
そして重いボディは剛性や強度の面でも有利だ。もちろん、現代のクルマは厳しい衝突安全試験をクリアするボディに仕上がっているので、単独事故で壁にぶつかったときの安全性能についてはボディが軽くてもネガにはならないよう設計されている。
ただし、クルマ同士の衝突事故では物理の法則から重いほうの衝撃は少なく、軽いほうは吹き飛ばされてしまう。コンパチビリティといって重量車の攻撃性を抑えるといった思想が広まって久しいが、リアルワールドでは重いクルマのほうが安全性において有利な傾向にあるのは否めない。