希少性以外のヒストリー面で価値がある
世界から届く、自動車オークション関連のニュースで「●●がナン億円で落札された」という記事を見かけることがある。あるところにはお金があるのだなあ、としみじみ痛感。なかには50億円以上で落札されたケースもあり、クラシックカーの価格は高騰している。なぜ、それほどの価値を秘めているのだろうか。
スーパースポーツはどんなに高価格であっても、新車で生産されている限りは基本的に台数は増えていく部類の商品だ。しかし、はるか昔に生産終了したクラシックカーというのは減ることはあっても、増えることはない。資本主義経済というのは希少性に価値がつくものだから、クラシックカーは価格が上昇するというのが基本トレンドとなる。
とはいえ、絶対的な価値ではなく、趣味の世界での価値であるからトレンドから外れると価格上昇ラインが緩くなる。単に生産台数が少ないだけだったり、市場マインドとしてバブル的に価格が上昇していただけのクラシックカーのなかには価格が下がっていくクルマもある。
では、どのような個体であればオークション価格が高騰するのか。たとえば、ヒストリーがしっかりしていることは重要なファクターで、ひとつにはレーシングリザルトがある。ル・マンで入賞したそのものといった個体は、変わりが効かない歴史的価値があり、オークション価格も高くなりがちだ。
また、著名人がワンオフオーダーした個体など、過去のオーナー歴という点でも価値を見いだされることがある。逆に言えば、特筆すべきヒストリーがない個体は、そこまで価格が上がることはない。つまり、車種の希少性に、ヒストリー面での価値が加わってこそクラシックカーの価値(落札価格)は上昇するわけだ。
国内でもネオクラの価格は上昇傾向
さて、超富裕層が億単位で競い合うオークションで扱われるようなクラシックカーでなくとも、日本のネオクラシックカー(1980年代の車種が中心)の価格も上昇傾向にある。新車当時はマニアに見向きもされなかったような実用系モデルであっても、ホイールキャップや内装など細かい部分まで新車状態を維持しているだけで価値が上がったりする。
これは、まさしく希少価値のなせるワザ。ネオクラシックのファンは、中古市場では低人気で生き残った数の少ない廉価グレードの中古車に価値を見出す傾向にあったりする。
こうして価値があると思えば、オーナーにはそれなりのコストをかけてメンテナンスや修理をしようというマインドが生まれてくる。マツダのユーノスロードスター、ホンダのビート、日産のスカイラインGT-R(第二世代)といったネオクラシックカーに対して、自動車メーカーが部品の再生産を開始したのも市場マインドを感じ取ったからだろう。
古いものには価値があるというオーナーのマインドと、珍しいものには価値があるというビジネス的な視点によって、クラシックカーの価格は上昇しているといえそうだ。