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古臭いデザインなのになぜ? クラシック系ホイールがブームになっているワケ

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TEXT: 木村隆之(KIMURA Takayuki)

アフター業界に押し寄せる復刻ブーム

 驚くほどの価格高騰を続ける旧車。そんな空前のブームを受けてか、カスタムを支えるホイールメーカーでは、クラシックなデザインへと回帰する逆転現象が巻き起こっている。例えば「ワーク」では1977年に発売したアルミホイール『エクイップ』を、同社創立40周年の2017年に『エクイップ40』として復刻。「エンケイ」は1982年に登場させた『エンケイ・メッシュ4』を『エンケイ92』というネーミングで復活させ、「スーパースター」は『シェブロンレーシングメッシュ』を再リリースするなど、近年はクラシカルデザインなホイールの新作ラッシュが続いている。

 また、スピードスターをはじめ、数多くのブランドを抱えるホイールシリーズ「SSR」を展開する「タナベ」も名作をリバイバルしたメーカーのひとつ。なかでもフォーミュラシリーズといえば「OLD is NEW」がコンセプトの、クラシカルなテイストを引き継いだブランドだ。

RX-7(FD3S)にSSR フォーミュラメッシュの最新作「エアロメッシュ」を装着

 今回、各メーカーから復刻系ホイールが相次いで販売されている理由と、製法の進化などについて、SSR事業部の土居さんに伺った。

「クラシカルなホイールが見直されている要因のひとつはデザインでしょう。現代から見れば昔のホイールは個性的ですよね。かつてを知る人には懐かしく、知らない人には斬新に感じられるのでしょう。実際にクラシカル系のデザインは、若い年齢層のユーザーからの反響が大きかったことも驚きましたね」。

「リバイバル第一弾、”フォーミュラメッシュ”を復活させた時は、例えばBMWミニのようにかつての名車がカタチを変えて復刻する時代背景もありました。『新しいクルマ+当時物のホイール』の図式は、現代で手に入らない旧いホイールは無いものねだりになります。でも現代風に蘇ったホイールならば可能。フォーミュラメッシュは19インチからスタートし、軽自動車用の16インチ、さらに人気の高かったセダン向けとして18インチという順でラインアップを増やしていきました」。

 当時のクルマ(旧車)に作られたホイールは、いまの車両ではサイズ的に装着不可能。そのようなマッチングも考慮し、各社はターゲットとする車種にあわせてサイズ設定しているわけだ。

 

製法技術の進化でホイールとしての性能も向上

 では、当時のモデルと現代に復刻したホイールはどこが違うのか。ルックスは似ているが進化している部分はあるのだろうか。

「例えば、ディスクとリムをつなぐファスナー部。昔のホイールはこういった部分を肉抜きしていたのですが、当時よりも車重が重くなった現代のクルマでは強度面の問題もあって、設計を見直しています。また、ホイール裏側の見えない部分の作り込みも今昔では大きく違う。大径化したブレーキとも密接な関係があり、現代のクルマに対応するために設計を見直すなど、ブラッシュアップが必要になるのです」。

 もちろん各ホイールメーカーの製造技術も大きな進歩を遂げており、デザイン、剛性、品質などは格段に良くなっているそうだ。また、最新のホイールとは異なる感性と魅力を持つと土居さんは言う。

 

最新ホイールにはない要素が好感触に

「現在のホイールは大口径化がトレンドという流れもあって、なるべく脚を長く(=スポークを長く)見えるようにデザインされています。昔のホイールは、脚の長さが短くてもカッコイイ。それがデザインとして成立していたところだと思いますね」。

 他にはセンターキャップの存在も大きいだろう。昔のクルマはハブ部分が高く、いまのホイールには皆無な大型センターキャップを持つホイールが多かった。古臭いイメージなのだが、コレも古き良きを主張するアイコンのひとつと言えるだろう。さらに懐かしのホイールとして欠かせない要素を聞いてみた。

「例えば色。フォーミュラメッシュでは、巷で多い淡いゴールドではなく、濃い色合いにしています。次に風合い。ホイール表面がツルっとした塗装が主流ですが、塗装の膜厚が薄く表面にザラつきを与えました。こういったフィニッシュも現代の塗装技術で再現しているのですね」。

 段付きリム、大型のセンターキャップ、脚の短いスポークなど、現在のトレンドを備えていない。だからこその差別化が可能であり、いまのホイールにはないシンプルなデザインゆえに奇抜さが少なく、マッチングさせやすいのも復刻ホイールの持つ魅力といえるだろう。

 古臭いモチーフやデザインをあえて踏襲し、最新のクルマの足元に装着できるようにリ・デザイン。そんな脱定番なところに人気の秘密と、それを支える各ホイールメーカーのこだわりが見え隠れしていると言えるだろう。

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