「UltimateCUP選手権」にリジェで出場
元ロードレース世界選手権(現Moto GP)ライダーの青木拓磨選手がポルトガル・エストリル・サーキットで開幕する「UltimateCUP選手権」にSRT41から参戦した。2020年にル・マン24時間レースに参戦するフランスのチーム「SRT41」と2018年に契約。2シーズン目となる今年、UltimateCUP選手権のLMP3クラスに『リジェJS P3』で参戦したのだ。
ところで、青木三兄弟をご存じだろうか。群馬県出身のロードレーサー(バイクレースのライダー)で、3人ともに世界で活躍した青木家の兄弟レーサーのことを指す。1971年生まれで長男の青木宣篤、1974年生まれの次男が青木拓磨、そして1976年生まれの青木治親だ。3人ともにポケバイからスタートし、ミニバイクレースを経てロードレースへ参戦。1995年のロードレース世界選手権(WGP)日本グランプリでは、3人がそれぞれ別のクラスだが表彰台に上がるという快挙も成し遂げ、そろってWGPへとステップアップを果たす。
現在、宣篤選手はスズキのマシン開発テストライダーを務めながら鈴鹿8耐に参戦。治親選手は2003年にオートレースに転向し、川口オートレース場所属のオートレーサーとして活躍(現行ランクA級99)している。
今回の参戦を果たした次男、青木拓磨は1998年テスト中の事故によって脊髄を損傷。下半身不随となったものの、各地での講演会や、年間30戦近くも開催するレンタルミニバイクでの耐久レース「レン耐」や「takuma-gp CUP」、「バトラックスライスポカップハルナ」シリーズのプロデュースも行なうなど、さまざまな活動を行なっている。
自身のレース活動フィールドは4輪に移し、車イス4輪レーサーとして「アジアクロスカントリーラリー」、「ダカールラリー」というラリーレイド、「GTアジア」などの国際格式レースから、グラスルーツレースである「N-oneオーナーズカップ」まで、精力的に参戦。ここ数年は、頻繁にフランスに通い、昨年はフランスの耐久レース「VdeV(ベドゥベ)耐久選手権」にシリーズ参戦を果たした。
そんな拓磨選手の4輪転向の際に目指していたのが、ル・マン24時間レースへの挑戦。さまざまな環境を整えて、昨年のベドゥベ耐久選手権への参戦は、拓磨の「- Takuma, Road to Le Mans Project – 」というプロジェクトの序章であった。
ベドゥベ耐久選手権は、フランスを中心に開催されるFIA公認耐久レース・シリーズ。拓磨が参戦したLMP3クラスは、レース専用に設計されたプロトタイプのレーシングカーに、日産の5リッターV8エンジンを搭載するワンメイククラスだ。
そして、今回の参戦チーム「SRT41」も興味深い。じつは、チームオーナーのフレデリック・ソーセ代表は6年前に人食いバクテリアによって四肢切断という障がいを負っている。その後の懸命な努力により、2016年にル・マン24時間レースへ「ガレージ56」という特別出走枠で参戦した経験を持つ努力家だ。そのソーセの下に集まったのが、ベルギー人のナイジェル・ベイリー選手、フランス人のスヌーシー・ベン・ムーサ選手、そして拓磨選手。全員が障がいを持つドライバーである。
このチームとともにル・マンへの道を歩もうと動き出したのだ。2018年のベドゥベ耐久選手権に続き、2019年にEuropean LeMans Series(ヨーロピアンル・マン=ELMS)という欧州のシリーズへ参戦、そして、2020年の6月のル・マン24時間レース特別枠で出場するという計画を描いている。
今回のポルトガルのエストリルサーキットでのUltimate Cup Series参戦(3月22-24日)がその第2章の始まり。ゼッケン84をつけたLMP3マシンで挑んだ、SRT41の2019年初戦。予選で12番グリッドを獲得(スヌーシー:1分36秒845/ナイジェル:1分37秒085/拓磨:1分36秒558)したが、決勝レースでは残念ながらクラッシュ&リタイヤとなってしまった。
次戦のフランス・ディジョン戦(4月26-28日)に向けて、チームはフォーカスし、これに臨む。