塗装の小さな浮きは「錆」の氷山の一角
ボディに発生した錆の原因は、飛び石など何らかの理由で塗装面がキズ付き、鉄板に泥や水分が付着して腐食(=酸化)するからだ。厄介なのは、たとえキズは小さくても塗装面の下に潜む錆は、徐々に広がってしまうこと。塗装の表面が少し浮いている程度でも、塗装面の奥は大変なことになっている。
サンプル車は、日産R32型スカイラインGT-R。平成元年から生産され、もっとも新しいモデルでも25年は経過しているため、錆による影響は少なからずある。現代でも流通している中古車にも同年代のクルマは少なくないため、対岸の火事とは思わず読んでほしい。
そもそも錆は、鉄と空気や水分が触れることによって酸化したもの。見た目どおり腐食した部分が赤くなるので「赤錆」と呼ばれている。
具体例として、ボディの塗装面がプクッと膨らんだ下には錆があると思って間違いないだろう。
見た感じでは塗装の割れのように思われるが、サンダーで塗膜を剥いでみると鉄板の黒くなっている部分が出現。錆で浸食されていた。
フェンダーの下部はさらに酷い状態で、下から覗くと塗装の浮いているところから錆がポツポツ見える。見た感じでは表面だけが錆びているように思えるが、ボディサイドの塗装も浮いてクラックが入っていた。
このような状況を見たことはないだろうか?
グラインダーで表面を軽く削っただけでボディに穴が開いてしまった。
錆びている範囲がわからないので、塗装だけ剥いでいくと恐ろしいことに。
フェンダー下部は錆が進行して表面がグサグサ。フェンダー内部も錆びていて見た目以上にボロボロだったのである。
赤錆を黒錆に転換して腐食を抑える
ここで注目なのは、板金作業前に防錆処理だけでなく、鉄板の深部に潜む錆の進行を抑えるために「錆転換剤」を使用していること。
錆転換とは、空気に触れることで腐食する赤錆を薬剤で黒錆に変えてしまうというもの。黒錆はフライパンの表面に使われ、黒い部分がまさにそれだ。錆の進行を抑えるため、古い水道管のクリーニング後の表面処理に使用されるなど、黒錆は意外に身近な存在なのだ。
「とりあえず錆を止めるだけ」と思われるかもしれないが、新品フェンダーに交換しても10〜20年で錆びる可能性は十分にある。錆を抑えることで5年後に再修理になってもコスト面での負担は少ない。
僅かな塗装の膨らみの下に潜む錆。見て見ぬ振りをしていると、その範囲はどんどん広がってしまう。
そうなる前に、手を施すことで修理コストを抑え、愛車を長く乗り続けることができるようになる。