装着時に注意したいポイント
自動車レースでは規則で装着が義務付けられているロールケージ(ロールバー)。鋼材のパイプが車内を巡るさまは剛健で、ドライバーや同乗者を守ってくれているという安心感を与えてくれる。
また最近では、カラフルなロールバーパッドを巻いたり、ペイントするなどドレスアップ系のアイテムとしても注目されつつある。昨今、スポーツカーを所有する人が増えてきたこともあり、ロールケージのことが気になっている人も多いのではないだろうか。
今回は、ロールケージを装着する際に注意しておきたいポイントをいくつか押さえておこう。特に車検に際しては、知らずに装着すると後で手間がかかることもあるから要注意だ。
取り付けには専門知識が必要
そもそもロールケージは、万が一クルマが横転したときに、ピラーや屋根が押しつぶされないようにし、乗車している人の頭部などのケガから守るために装着するもの。横転以外でも、横や後ろからの衝突事故に対しても、同じようにドライバーや搭乗者を守ってくれる確率が格段にアップする。サーキットだけでなく一般道でも、ロールケージのおかげで命が助かったという事例は少なくない。
また、ボディ剛性をアップさせるパーツとしてもかなりの効果を発揮する。世界ラリー選手権のマシンやSUPER GTレースカーの車内を見ると、ロールバーが縦横斜めに張り巡らされている。競技車とはいえボディやシャシーの構造上で弱い部分をシッカリと補うために装着されている。その姿は、レースカーやラリーカーの象徴とも言え、そこに”萌える”クルマ好きは多いのだ。
市販車への装着に関しては本来であれば、プロショップに取り付けを依頼したほうが確実。間違った方法で装着した場合、その機能を果たしてくれず、意味がない装備になってしまう。取り付け自体はDIYでも可能なのだが、きっちりとした性能を発揮するには知識が必要で、手間がかかるのがロールケージの装着なのだ。
ちなみに、ロールケージとロールバーの違いだが、ロールバーを組み合わせて、カゴ/籠(Cage)になっている状態を意味する言葉からロールケージが生まれ、ロールケージを構成しているバーがロールバー、ということになるだろう。オープンカーの座席の後ろにあるアーチ状のバーはロールバーと呼ぶし、ロールケージをロールバーと言っても間違いではない。
例えば、トヨタのヴィッツや86のワンメイクレースなどでは、「ロールケージ」という表記に統一されているが、「ロールバー」でも意味は通る。
乗車定員の保護と変更が必要
さて、車検に関してのポイントは2つ。まずはひとつ目。市販されているロールバーの材質のほとんどが、スチール製かクロモリ製。いずれの場合も乗員保護の観点から、金属がむき出しの状態では車検に通らない。そこで、クッション性のあるものを巻き付けておく必要があるのだ。
定番はロールバーパッド。ロールバーをつくっている有名メーカーであれば、必ずロールバーパッドも取り扱っている。ロールバーを車内に装着した後で巻きつけるよりも、バーを組む前の単品状態でつけるほうが手順としても効率がいいし、見た目も美しい。このあたりが装着する際のコツのようなもの。プロは匠の技を用いて、パッドを美しくつける術を持っているわけだ。
2つ目の注意点は、ロールケージを装着することで乗車定員数が変わってしまう場合もあることだ。後部座席をつぶして斜行バーを入れると人が座れなくなるケースがよくある。車検証には乗車定員数の記載があるので、記載事項を変更しないと車検には通らない。
後部座席を取っ払うときは、定員を2名に変更すればオッケー。ロードスターやコペンなど、もともと定員が2名のクルマはもちろんその必要はない。
以上のように、いくつかの注意点を知ってさえいれば、ロールケージやロールバーを装着すること自体はそれほどハードルの高いものではない。公道を走っても何ら問題ないし、デメリットと言えば少々車重が増えるぐらいだろう。安全という意味でのメリットは多々あるし、ボディ剛性アップという部分でも操縦安定性が向上するなど機能的な効果は大きいのだ。