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手間を惜しまない日本の伝統工芸! 七宝焼きエンブレムが与えられたクルマ5選

エナメルの紋章は高級車の証だった

 フロントマスクあるいはボンネットのセンターに取り付けられたエンブレムは、そのクルマを象徴するアイテムだ。国産車でも昔のクルマほど拘って作っていた。今回はそうしたこだわりのエンブレムの中から、とくに製法にこだわって、七宝焼きのエンブレムを与えられたクルマを5台紹介してみたい。

 七宝焼きというのは、英語でいうとenamel(エナメル)のこと。その起源は古く、紀元前のエジプトで考案された金属工芸のひとつ。

 日本には七世紀ごろ伝わり、法華経の中にある七宝(金・銀・真珠・メノウ・ルリ・シャコ・マイエ)のような美しさがあるという意味から、七宝焼きと名付けられたという説がある(材料に宝石を使ったという説もある)。現在主流のアルミのプレス品や樹脂のエンブレムとは、重厚感と耐久性が格段に違う。

 エンブレムはクルマの「顔」。こういうところは、コストダウンせずに、いいモノを奢ってもらいたいということで、古き良き時代のクルマを見ていこう。

いすゞ117クーペ

 国産車の歴史に残る美しいスペシャリティカー、それがいすゞ117クーペだ。ジョルジェット・ジウジアーロの手による優美なデザインは、細部まで計算しつくされていていまも輝きを失わない。

 そんなジウジアーロが117クーペのためにチョイスしたシンボルが日本の「唐獅子」だ。この唐獅子を七宝焼きにしてエンブレムに採用したジウジアーロのセンスは、さすがにタダ者ではない。

トヨタ2000GT

「TOYOTA 2000GT」とだけ書かれたシンプルな三角のエンブレム。じつはとっても贅沢なシロモノだ。高級時計などにも使われる、輪郭を細い18Kの平板で仕切って描いたエナメル製法の「クロワゾネ製法」で作られた七宝焼きでできている(クロワゾネとは、フランス語 で「仕切られた」という意味)。

 工程数が非常に多く、100時間以上の製作時間がかかる高級品。エンブレムだけ見ても、トヨタ2000GTは技術やコストを惜しまず作られたクルマだというのがよくわかる。

トヨタ・スープラ(A70)

 1986年に「トヨタ3000GT」というキャッチフレーズで登場した70スープラの前期型には、2000GT譲りの七宝焼きのエンブレムが付いていた。

「TOYOTA SUPRA」というロゴのシンプルなデザインだったが、後期型になってトヨタのエンブレムになってしまったのは残念なところ。

日産インフィニティQ45

 平成元年に「ジャパンオリジナル」というコンセプトで登場した日産入魂の高級車がインフィニティQ45。オプションで金粉蒔絵(漆塗り)のインストルメント・パネルを用意したり、18金製のゴールドキー(価格52万円)のオプションがあったり、油圧式アクティブサスを採用したり、話題性はたくさんあった。

 そして大胆にもフロントフェイスは、グリルレスの薄いマスクにインフィニティマークの七宝焼きのエンブレムという組み合わせで勝負! しかしこのデザインは不評に終わり、マイナーチェンジの際、七宝焼きエンブレムも廃止されてしまった……。

トヨタMR2(AW11)

 七宝焼きのエンブレムはコスト的にも高級車専用のイメージがあるが、1984年にデビューした初代MR2=AW11のエンブレムも七宝焼きだった。

 AW11のエンブレムには文字は入っていない。鷹か鷲か、ともかく猛禽類の図案が描かれている。この猛禽類の絵、じつはAWの文字を模したとされているが、「A」はともかく「W」の字は・・・・・・。

 このAW11の七宝焼きのエンブレム、約20年前に補修部品が製造廃止になり、樹脂製のエンブレムに切り替わっているので、レアアイテムとなってしまった。

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