圧迫の少ない視界も重要ポイント
4月18〜20日、大阪市・インテックス大阪で「バリアフリー2019/慢性期医療展2019/看護未来展2019/在宅医療展2019」が開催。4展合計で382社が出展する介護・福祉・高齢者医療・介護を網羅する関西最大級のイベントとなった。ここにトヨタ(ダイハツ)、日産(オーテックジャパン)、ホンダ、スズキといった4つの自動車メーカーも出展。福祉車両の展示を行った。
高齢化社会になり、要介護者数が増加し、介助者の負担軽減の必要性が求められている。イベントの自動車メーカーブースでは、車いすでそのまま乗車できるいわゆるスロープ付き車の展示が目立った。
トヨタ、日産、ホンダがラインアップするスロープタイプ福祉車は、ミニバンが主流。軽自動車のスロープ付き福祉車は、トヨタを除く、日産、ホンダ、スズキが設定しているが、今回は5ナンバーサイズのミニバンに注目してみた。
トヨタがラインアップするのはノア、ヴォクシー、エスクァイアの3モデル。特徴は、ニールダウンというエアサスペンションによって車高を下げられることで、文字通り空気の圧力を使って車高を上下するというもの。ニールダウンのメリットは、スロープの角度が浅くなり、車いすを押す介助者の負担を軽減することができるからだ。
さらにトヨタで注目すべきは、ウェルチェアという車いす。クルマに乗せることを前提に設計され、高いシートバックのみならずリクライニング機能を持っている。
背もたれを少し寝かせることで、体重が一部(お尻)に集中しないようにできるので、多少長い時間の移動でも快適に過ごせるわけだ。
また、通常のクルマのシートと同じく、衝突時の20Gという高い圧力にも耐えられる設計。車いすを固定するフックを掛ける部分やフレームも強化されている。車いすのトレンドは、軽量・コンパクト(畳みやすい)・安価。トヨタのウェルチェアは、どちらかといえばクルマに乗せることを重要視した結果なのだ。
そして、日産セレナもリヤサスを縮めてスロープの角度を浅くできるようになっている(こちらは油圧式サスペンション)。車いすの固定は他のクルマと同じように、2列目もしくは3列目シート部に固定する方法で、3列目シート部でも左右の視界を十分に確保している。
というのもセレナは、跳ね上げ式の3列目シートを畳んだ状態の位置を低くすることで、クオーターウインドウ(左右の最後部のサイドガラス)に被る面積を縮小。運転席からの死角を減らそうという工夫が、結果的に3列目シートに座る車いすの乗員の閉鎖感を軽減しているのだ。
そういう点では、ホンダのスロープ付きはステップワゴンはもっとも優れている。そもそもステップワゴンの場合、3列目シートが床下に収納するから左右のウイドウの視界を遮るモノはない。
その反面、フロアが高くなってしまうのが難点。さらに3メーカーで唯一、リヤサスを任意で縮める機構は装着されていない。それゆえスロープの角度はキツくなっているが、車いすを車内に入れるための電動ウインチは標準装備することで対応している(他の2社はオプション)。
「リヤサスを任意で伸縮できる機能を付けると、ノーマル車並みの走安性を確保するのが難しいので、採用するか否かは悩ましいところです。弊社では、クルマとしての安定性を重視しています」とホンダの担当者は語る。
確かに、車いすの乗員は、走行中の揺れに対して自身で耐える力が弱いので、車酔いをしやすいといわれている。つまり、走安性の高くすれば不要な車体の揺れが軽減され、車いすの人も疲れにくいわけだ。
このように同じミニバンの福祉車両だが、三社三様の特徴がある。トヨタはウェルキャブステーション、日産がLV店(LVとはライフケアビークルの意)、ホンダはオレンジディーラーと福祉車両の専門知識を備えたコンサルタントが常駐するディーラーがあるので、自分および家族にピッタリなクルマ選びをするために相談してみるといいだろう。