塀がある狭い道路は日本特有の道路環境
ボッシュは、2019年3月より日本国内でアドバンスト ライダー アシスタンス システムの公道実証試験をスタートした。今回の実証試験では、日本の道路交通環境に基づいたシステムを開発することで、国内における2輪車ユーザーに安全で快適な運転環境を提供するとともに、グローバルに事業を展開する車両メーカーの日本市場への対応をサポートすることを大きな目的としている。
2輪車はクルマに比べ道路交通におけるリスクが大きく、死亡事故のリスクが13倍も高いというデータもある。ボッシュは2輪車ユーザーにより安全な運転環境を提供するため、1995年に第一世代の2輪車用ABSを市場に投入。以来、20年以上にわたって2輪車向けの製品、技術を提供してきた。とくにアシスタンスシステムの分野ではマーケットリーダーとして市場をけん引している。
アドバンスト ライダー アシスタンス システムとは、ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)、衝突予知警報、死角検知からなる、2輪車の安全性と走行快適性を向上させる一連の安全運転支援システムだ。ボッシュの事故調査報告によると、レーダーベースの安全運転支援システムを装備することによって、2輪車事故の7件に1件を防げるとされている。
今回の公道試験は、東京都、神奈川県、栃木県の高速道路で行なわれる。道幅が狭く、レーダーの検知に影響を及ぼす可能性がある遮音壁やガードレールなどの外乱が多い日本特有の道路環境に対応したシステムを開発することで、日本の2輪車ユーザーに安全かつ快適な運転環境を提供。日本での公道試験の知見や経験の蓄積によって、日本の車両メーカーのニーズに的確に応えることができる体制を整えることにもつながるという。
ボッシュの2輪事業を担当するモーターサイクル&パワースポーツ事業部門を率いるジェフ・リアッシュは、「日本におけるアドバンスト ライダー アシスタンス システムの公道試験により、ボッシュが日本の2輪車ユーザーと全世界の車両メーカーへさらなる貢献ができることを期待しています」と述べていることからも、いかに力を入れているかかうかがえる。
ボッシュのアドバンスト ライダー アシスタンス システムについて、説明しておこう。
まず、ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)だが、これはクルマにも採用されている機能と同じ。交通の流れに合わせて車速を調整し、前走車との安全な距離を維持して走行できる。ACCを装備することで、ライダーは利便性の向上を感じるだけでなく、渋滞のなかでも集中力をキープできる。また、交通量の多い道路を走行しながら前走車との距離を正確に保てるため、長時間の走行でも疲労を低減できるとのだ。
衝突予知警報は、他の車両が危険なほど接近し、ライダーがその状況になにも対処しないことを検知すると、聴覚的、または視覚的な信号を通じてライダーに警告するシステムだ。追突事故のリスクを低減し、二次衝突の被害を可能な限り軽減できる。
もうひとつ、死角検知という機能がある。これはレーダーセンサーによって車両の周囲をモニターし、ライダーが安全に車線を変更できるよう支援する機能だ。ライダーから見えづらい位置にある対象物を確認し、ライダーの死角に車両が来た際には、ミラーに視覚信号などを表示し警告する。
これらの機能を含めた、ボッシュのアドバンスト ライダー アシスタンス システムは、2020年から量産され、Ducati(ドゥカティ)とKTMのモデルに搭載されることが決まっている。
クルマの場合、軽自動車にも先進の運転支援システムが普及し、被害軽減(自動)ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置等を搭載したクルマを「セーフティサポートカーS(サポカーS)」、「セーフティサポートカー(サポカー)」という愛称を付け、普及と啓発を推進している。事故のない社会を目指すうえでは、2輪車にも安全運転支援技術の普及は必須である。もちろん、交通事故を起こしにくくするスマートなドライブ、ライディングを身につけることが大前提だが、それでもヒューマンエラーは起きる。それを防止することが、真に交通事故のない社会の実現に繋がっていくのだ。