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シートを外しただけでも構造申請が必要! 規制緩和されても意外に厳しい車検項目

似て非なるカスタムに必要な申請

 過去に何度か行なわれた規制緩和により、合法カスタムの範囲はだいぶ広くなった。しかし、『構造変更』を必要とする内容は依然として多く、かつ『記載変更』という似て非なる制度も分かりにくい。両者の違いやそのボーダーラインについて解説していこう。

構造変更と記載変更の違いとは?

 まずは『構造変更』と『記載変更』の違いについて。分かりやすくいうと構造変更は”車検を伴う変更”で、車検の残り期間があっても、新たに車検を受け直さなければならない。対して記載変更は車検を受け直す必要がなく、文字どおり”車検証の記載事項を変更”するだけ。つまり構造変更のほうが法定費用を含むコスト、さらに手間もかかると考えていい。

 それでは構造変更が必要になる、代表的なカスタムを挙げていこう。カテゴリーを問わず多いのがボディサイズだ。車検証に記載されている外寸から長さは3cm以上、高さで4cm以上、幅が2cm以上の変更があるときは構造変更が必要。

 オーバーフェンダーを装着して車幅が広がったとか、車高調整式サスペンション(以下車高調)などでローダウンやリフトアップしたら、車高がどれくらい変わったかを把握しておきたい。

 ちなみに足まわりを普通の金属バネとダンパーの組み合わせからエアサスに変更したらどうなるか。かなり大がかりなカスタムに思えるけど、なんと構造変更ではなく記載変更でオッケー。ただし、金属バネから空気バネ(ハイドロ・油圧も含む)、または純正エアサスを車高調整式サスなどに変更するようなケースは、改造申請が必要となる。

 改造申請には、後付けしたパーツメーカーが発行する強度計算書などパーツの信頼性を担保する書類を添付する必要だ。

 もちろん、ローダウン量が4cmを超えないことが前提だが。現実的には、この手のカスタムを施すと車高が4cm以上変わっているだろうから、結果的に構造変更が必要にケースが多くなる。しかし、エアサス車の車高を計測するのは中点といわれる伸縮幅の中間位置。もちろん、エンジンを始動しての状態での計測なので、自動車技術総合機構によるとエアサスの中点で車高が4cm以上変化していなければ記載変更だけで済むケースもあるという。

 ちなみに、改造申請が必要なのは、トランスミッション、プロペラシャフト、足まわりのアーム類などが対象。改造申請したクルマには、車検証の型式に「改」と記載される。

 余談だが1994年まではスプリング交換ですら公認車検の対象(今で言う構造変更)。車高調なんてレーシングカー専用のアイテムに近かったが、規制緩和のおかげでマフラーやホイールもなども含め、改造とは見なされなくなりイッキに身近な存在となった。主な指定部品なら記載変更も必要なく車検をパスできる。

構造変更に必要な申請とは?

 では、車検が残っていても、それを切って新たに検査を受け直す「構造変更」とはどのような内容か説明しよう。改造したタイミングによっては、車検を1年以上無駄にすることになるだけにキッチリ押さえてほしい。

 まずは、前述したように車体サイズの変更。車重に関しては100kg(普通乗用車・大型特殊自動車)または50kg(小型自動車・軽自動車)以上の変更では記載変更となる。ただし、車重が増加したときは「装着されているブレーキで規定の制動力を発揮している」ということを証明する書類が必要となる。これを用意するのは、かなり大変なことなので、一般ユーザーでは不可能だろう。

 このほか構造変更の対象となるのは、乗車定員、ワゴンからバン(商用車)、燃料(LPGハイブリッドなど)、エンジン型式(改造変更も必要)といった変更。ロールケージを装着するとか、ミニバンのセカンドシートを取り外すとか、後席にオーディオをインストールするなどの理由で、乗車定員が変わったときは要注意だ。

 ところがエンジン変更で例外もある。例えばシルビアなどが詰んだニッサンの名機”SR20″型エンジンは過給機付きの「SR20DET」と、過給機なし(NA)の「SR20DE」があるけど、車検証に記載されるのは「SR20」だけ。つまり元がNAのボディに過給機つきのSR20DETを載せても、構造変更どころか記載変更すら不要なわけだ。

 一方、同じエンジン型式でも排気量が変わるときは、構造変更しないと違反になってしまう。もっとも外見で排気量アップを判断するのは不可能に近く、形骸化しているといえなくもない。

 いずれのケースも「構造変更は次の車検でいいや」と考える人が多いだろう。ところが、構造変更が必要な状態で公道を走行するのは、違法であることも忘れないでほしい。

 最後に構造変更に必要なモノを列記しておく。車検証/自賠責保険証/定期点検記録簿/自動車検査票/納税証明書/重量税納付書/OCRシート1号様式、他は所有者の印鑑くらい。ただしパーツの強度を証明する書類を提出したり、自分で書類を作成しなければならないケースもある。

 勉強と考えるなら自分で挑戦してもいいが、難易度はカスタムによって天と地ほどの開きがあるのだ。書類の不備で時間がかかっているうちに車検が切れた、なんて事態を避けたいなら初めからプロにお願いしたほうが無難かもしれない。

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