世界の高級車がライバルにしたレクサスの原点
今上天皇のご譲位により、30年間にわたる平成の時代が、間もなく終わりを告げようとしている。その始まりとなった平成元年、1989年はのちに「ビンテージイヤー」と言われるほど、日本の自動車メーカーから名車が数多く誕生した1年だった。
R32型スカイラインGT-Rは”速さ=レースでの勝利”のために最先端技術を満載したモデルだったが、LS400には「世界トップレベルのハイパフォーマンス・ラグジュアリーカー」を作り上げるために、数多くの最先端技術が採用された。
低価格と高品質&信頼性で定評のあるトヨタが、ドイツ御三家をはじめとした欧米の老舗ブランドと互する高級車を作る「マルFプロジェクト」を発足させたのは、初代LS400発売の5年前、1984年のこと。
その開発の基本方針となったのは、妥協を許さず矛盾する要素をも両立させる「Yetの思想」と、問題が生じればその根本までさかのぼって解決する「源流対策」というもの。とりわけNVH対策において徹底され、制振鋼板の採用やプロペラシャフトの精度向上、ボディパネルやガラスなどの隙間低減、シリンダーブロックの強度アップなど、生産方法も含めて数多くの新技術が生み出され採用されていったのである。
こうして完成したレクサスブランド最初のモデル、初代レクサスLS400/トヨタ・セルシオは89年9月に北米で、同年10月に日本で販売開始。たちまち大ヒットとなり、特に静粛性の高さにおいては、後にドイツ御三家の競合車にもベンチマークとされるほど、大きな影響を与えた。
その後日本では3代目までセルシオとして販売されるが、2005年にレクサスブランドが日本でも展開されると翌06年に4代目を「レクサスLS」として発売。17年10月には、11年ぶりにフルモデルチェンジし現行型の5代目となった。
この5世代30年間の歴史の中で、レクサスLSが最も大きく変化し進化したのはデザインだろう。三世代のセルシオは端的に言えばメルセデス・ベンツSクラスを連想させる、ふくよかで押し出しの強いスタイルだった。
しかし、全世界共通でレクサスLSとなった先代および現行モデルは匠の技と日本の美意識を随所に採り入れた、繊細かつスマートな佇まいに変化。特に現行モデルは伝統工芸品を思わせる精緻な設えを、ダッシュボードやシート表皮、ドアトリム、加飾パネルなどに多用した、日本車らしい高級車像を構築するに至っている。