一世を風靡したマークIIの販売台数
2019年をもって生産を終了するトヨタ・マークX。振り返れば約50年に登場したマークXの元祖となるコロナ・マークIIが開拓した市場には、ライバルメーカーが数々の対抗モデルを投入してきた。その双璧の代表となるのが日産ローレルとスカイライン。しかし、マークIIの牙城を崩すことはできなかった。そのライバル関係の歴史を改めて振り返ってみよう。
国産乗用車は、実質的に1950年代の後半から普及を開始した。トヨタは1955年にクラウン、1957年にコロナを発売して足場を固め、1966年にはカローラも投入している。そしてコロナとクラウンの中間車種として1968年に加わったのがコロナ マークIIだ。
日産も事情は似ており、同じ年にブルーバートとセドリック&グロリアの間に位置するローレルを加えた。
宿敵ローレルと、その助っ人スカイラインにも対抗するマークII
マークIIとローレルは、その後も宿敵であり続けたが、ローレルは販売面で苦戦した。マークIIの方が、このカテゴリーにとって大切な高級感を巧みに表現していたからだ。
トヨタが「販売のトヨタ」と呼ばれた背景には、ディーラーの販売力が強いだけでなく、ユーザーの購買意欲を高めるデザインや装備を採用していることがあった。
1972年に発売された2代目ローレルは、アメリカ車風の外観が注目されたが、売れ行きは伸びていない。1980年の4代目はシンプルで好感の持てる印象だったが、豪華さが足りず売れ行きは伸び悩んだ。そこで1984年の5代目は、思い切り派手なメッキグリルを採用したが、厚化粧的に見えてしまう。同年代の販売されていた60系マークIIの高級感と洗練度、さらに清潔感をも併せ持つデザインは卓越していた。
むしろ健闘したのはスカイラインだ。当時の日産はデザインと販売力はいまひとつでも走りは良く、スカイラインは、ローレルと共通のプラットフォームを使いながら走行性能を高めた。
ただしスカイラインが最多販売台数の15万7598台を登録したのは1973年で、「ケンメリ」の愛称により親しまれた4代目C110型であった。
それ以降はバブル経済期を含めて売れ行きは一貫して下降している。1989年に8代目R32型スカイラインが発売されてGT-Rも復活したが、1990年の登録は8万863台にとどまった。
マークIIは1990年に30万以上の販売台数!2018年の国内販売第1位よりも多い!
一方、マークIIは2代目の10/20系が1973年が20万5960台、6代目となる80系が1990年は30万118台と物凄い台数を売っている。2018年の国内販売1位は、2位に大差を付けてホンダN-BOXだったが、約24万台に過ぎない。いかに6代目80系マークIIの販売台数が凄かったかご理解いただけるだろう。
4代目C110型スカイラインは、直列4気筒と6気筒でホイールベースを変えており、ファミリー層からスポーツ指向、ラグジュアリー指向まで幅広いユーザーをカバーした。それが1980年代に入ると、ライバル車が増えて、同じ日産のシルビアやレパードも売れ行きを伸ばし、販売下降を食い止められなかった。この対策を探るために、必死でボディの拡大と縮小を繰り返している。サイズを変えたから売れなくなったのではない。それでもクルマ好きから見れば、8代目スカイラインはコンパクトなボディで運転が楽しい。居住性から質感までバランス良く高めたマークIIに比べると、大いに好感を持てたモデルだ。
このほか日産は1988年に初代セフィーロを発売して、スポーティなスカイライン、豪華指向のローレルとは違う都会的で新しい価値観を生み出した。人気は長続きしなかったが、エンジンや内装を自由に組み合わせられるバリエーション構成など、マークIIに比べて新鮮味の強いセダンであった。
1990年には三菱からディアマンテが登場する。1989年の自動車税制改訂を踏まえて3ナンバー専用セダンに仕上げ、BMWを連想させるフロントマスク、前輪駆動と併せて4WDを幅広く設定したことなどが注目された。発売当初は好調に売れて「下取査定の高い人気車」と評判になったが、長続きしなかった。
ボディサイズやエンジン排気量は違ったが、スバル・レガシィもマークIIのライバル車に含まれるだろう。1989年に発売された初代レガシィツーリングワゴン2.0GT4WDの価格は、この時に販売されていた6代目80系マークIIの2.0ツインカムグランデなどに近い。
販売台数は6代目80系マークIIが圧倒的に多かったが、クルマ好きの間ではセダンも含めて走りの良いレガシィが人気を高め「スバリスト」という言葉まで生まれた。
このほかホンダのインスパイアとアコード、マツダアンフィニMS-8などもライバル車といえるが、マークIIに比べるとインパクトは弱かった。
このように考えると、マークII/マークXはライバルが不在といえるほど、息の長い人気車だった。現行マークXもV型6気筒エンジンを搭載した全幅が1795mmに収まる後輪駆動のセダンだから、貴重な存在だ。
なぜもっと大切に育てないのか。マークXの廃止は、トヨタの国内市場に対する本気度を象徴しているように思える。ファイナルエディションを設定するのは、まだ早いと思う。