世界のマーケットをターゲットに開発!
ホンダのCBシリーズといえば、おそらく世界で一番売れている単一車種シリーズのオートバイだ。その中でも一際、存在感を輝かせるのが1969年に衝撃的にデビューを果たしたCB750Fourではないだろうか。それまでの欧米製2輪車の常識を覆すエポックメイキングなOHC空冷並列4気筒750ccマシン、CB750Fourが世に出てから今年で50年を迎えた。
レース用バイクとして登場した初代CB
実はCBシリーズの元祖は、1963年に登場したホンダベンリーCB92スーパースポーツというモデルだった(ベンリーは当時250cc以下に付けられた)。元々はC92という実用車バイクをベースに当時盛り上がっていたアマチュアレース用にホンダが開発したのが、このベンリーCB92スーパースポーツだ。
いまから約60年前のスペックが当時としては驚異的で、OHC空冷2気筒125ccエンジンは吸排気系をチューニングして1万500回転(!)で15馬力を絞り出していた。またシルバーと赤に塗り分けられた大胆なデザインや燃料タンク形状が真上から見るとドクロのように見えることから「ドクロタンク」と呼ばれ親しまれた。
もちろんその性能は折り紙つきで伝説的な「浅間火山レース」ではホンダワークスマシンを抑え、市販のベンリーCB92スーパースポーツが優勝する快挙を成し得たのだ。これでCB92の人気はさらに爆発的となった。
この後に登場したのが、ホンダドリームCB72スーパースポーツという250ccのスポーツバイクだ(ドリームは当時250cc以上に付けられた)。こちらのモデルも1950年代後半から盛り上がりを見せた「クラブマンレース」用に参加するための車両としてC71をベースに大幅にブラッシュアップして開発された。
それまで浅間火山レースやイギリスのマン島TTレースで得たノウハウを注ぎ込み、日本はもちろんアメリカやヨーロッパにも輸出され大人気となった。特に排気量を305ccとしたドリームCB77スーパースポーツは最高出力28馬力/9000回転で最高速度160km/h(カタログデータ)など、欧米の450ccクラスをも凌ぐ性能で人気となった。
ライバルより小さな排気量で高性能なCB450
そして1965年に登場し世界中を驚かせたのが、当時のホンダのフラッグシップモデルとなったドリームCB450だ。海外ではドイツのBMW R69S、イギリスのノートン650RSやトライアンフT120ボンネビルなどがそれまで世界最速の座を争っていた(トライアンフのT120は120マイル=約192km/hの最高速を表記したもの)。そこに現れたのが、DOHC2気筒444ccのドリームCB450だった。
ホンダはトライアンフのT120ボンネビル(649ccOHV2気筒46馬力/6500回転)をベンチマークに開発し、同等の性能を200cc少ない排気量ながらも高性能なDOHC450ccマシンで成し得たのだ。国内ではクジラタンク(海外ではキャメルタンク)と呼ばれた初期型K0(ケーゼロ)モデルでは4速ミッションを介し43馬力/8500回転でゼロヨン13秒9をマーク。この高性能ぶりが世界中から賞賛され「オートバイの王様」と親しまれ、さらにはその機敏性と機動性、信頼性などが認められ各国の白バイマシン採用となり「輸出の花形」となり大成功を収めた。
このCB450の登場により世界のマシンは、その対抗処置として排気量アップを図り高性能化へとシフト。もちろんホンダもそれに呼応した。
レースで得意の多気筒エンジン搭載したCB750
アメリカの販売店から言われていた「Bigger is better!」の言葉や、本田宗一郎社長がスイスに出張した際の逸話で「ずいぶん小さな白バイに乗っていると思っていたら、乗っている人間が大きかった。バイクはトライアンフの750ccだったから、これじゃ日本の発想でバイク開発をしていてはダメだ」という言葉などから、ホンダがレースで得意としたマルチシリンダー4気筒で750ccという排気量。そして当時ハーレ−1300ccの最高出力66馬力を上回る67馬力を8000回転という高回転で得られる常識はずれのバイクを開発。
また「走る・曲がる・止まる」の基本性能を高めるため、レースで培ったダブルクレードルフレームを採用するほか、オイル潤滑もレーサー顔負けのドライサンプ方式や市販オートバイとしてディスクブレーキの初採用にも踏み切った。
こうして圧倒的な存在感を見せる空冷並列4気筒エンジンと4本マフラーに、扱いやすさを兼ね備えた大柄なアップハンドルなどそれまでのモーターサイクルの世界観とは桁外れのデザインと技術、性能が注入されたドリームCB750Fourは、今からちょうど50年前の1969年に世界初の200km/hオーバーの市販オートバイとして登場した。
以降、1970年代のホンダではこのCB750Fourを筆頭にマルチエンジン化が進み、CB500/CB550/CB350/CB400などが次々に世に送り出され、ホンダCBシリーズの人気を不動のもにした。
もちろん1969年の発表当時は1ドル=360円時代だったことから、このCB750Fourのアメリカでの爆発的なヒットでホンダは急成長し、この資金を元手に次第に4輪開発も本格化していった。同時に日本では「ナナハンブーム」が到来、カワサキのZシリーズ、スズキのGTシリーズ、ヤマハのTXなどが追随した。これにより国内での最大排気量が750ccという自主規制にもつながったほど、CB750Fourの存在感と性能は圧倒的だったのだ。
意外に知られていないのが、1983年に登場したCBR400Fに搭載されたエンジンだ。ネイキッドバイクのホンダCBR400Fには、回転数応答型バルブ休止機構=REVを採用した4サイクルDOHC16バルブ4気筒エンジンが採用されていた。
わずか400ccながら最高出力58馬力/1万2300回転、最大トルクも3.6kg-m/1万1000回転を発揮するだけでなく燃費にも優れる新設計エンジンだった。9000回転までは2バルブだがそれ以上の回転では4バルブとなり性格が一変するエンジンだった。そう、実はこのREVシステムが1989年に登場するインテグラに搭載されるホンダ初のV-TECエンジンB16A型へと発展したのだ。
「現代のホンダの礎」となったといっても過言ではない「ホンダCBシリーズ」にこそ、ホンダ独自の「革新的な技術」や「未知への挑戦」「独創的発想」、そして「夢=ドリーム」や「人々の生活の便利=ベンリー」さが満ち溢れていた。
ぜひともこれからのホンダも「いつでも挑戦者」として、二輪四輪汎用、そしてレースの各分野を問わずに常に挑み続けてもらいたい。
なお、ツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)内にあるホンダコレクションホールで4月6日から「DREAM CB750FOUR 誕生50年 特別展示」を行っている。展示はCBシリーズだけではなく、時代を彩った他社バイクも展示されているため見応えとなっているから、ぜひ足を運んで頂きたい。
公開開始日 2019年4月6日(土)〜2020年3月
場所 ホンダコレクションホール 2階南棟
営業時間 9:30~17:00 (曜日によって異なる)
料金 無料(別途ツインリンクもてぎへの入場・駐車料金が必要)