運転手付きで高級ミニバンに乗るのがステータス
バンコクモーターショーは、東南アジアにあるタイ王国の首都バンコクで開催されるモーターショー。実は世界有数の日本車にラブリーな国で、街を走るクルマの日本車比率は9割弱と東京よりも高いほどです。そのため、バンコクモーターショーの会場にも日本メーカーの出展車両数も多し。そんななかで、もっとも多くの台数が展示されていた日本車はなんだと思いますか。
普通であればトヨタ「カローラ」やホンダ「フィット(現地名ジャズ)」などが多そうなイメージですが、正解はトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」。その数20台以上ですから驚きますよね。
トヨタ・ブースに展示されていたのは「ヴェルファイア」が1台のみでしたが、じつはドレスアップブランドのブースからオーディオメーカーブースのデモカーまで、多くのアルファード/ヴェルファイアが並んでいました。言い換えれば、市場での人気を反映しているということになります。
バンコクの中心部に行ってみると、初めて訪れたクルマ好きの日本人は言葉を失うことでしょう。あまりにもアルファード/ヴェルファイアが多く、見かける頻度は日本国内以上。なぜ人気が集まるのでしょうか。
その謎をひも解くには、日本の高級ミニバンがどのように使われているかを理解するのが近道。現地では、富裕層の移動用に好まれています。もちろん運転するのはオーナーではなくお抱え運転手。ですからアルファード/ヴェルファイアはいわゆる「ショーファードリブン」、高級車なのですね。
タイではドイツの高速道路アウトバーンのような超高速移動もなく、市街地は渋滞も多い。そんな場所で後席に乗るなら、「メルセデス・ベンツSクラス」や「レクサスLS」よりも、アルファード/ヴェルファイアのほうが広くて快適です。しかも乗り降りだってしやすい。
ステイタスを追求するならメルセデス・ベンツ「Vクラス」もあるし、ミニバンとして考えればフォルクスワーゲン「マルチバン」の豪華仕様だって販売されています。
しかし、それらとアルファード/ヴェルファイアには明確な違いが存在。アルファード/ヴェルファイアはあくまで乗用車として設計されているのに対し、Vクラスやマルチバンの上級モデルは豪華な内装とはいえ基本設計は商用車。成り立ちが明確に違うのです。
「アルファード/ヴェルファイアのほうが乗り心地がよくて快適。それに床が低いから乗り降りしやすい」というのが、現地の富裕層の共通認識。だからVクラスやマルチバンではなくアルファード/ヴェルファイアというわけなのです。
ちなみに正規モデルの価格は、2.5リッターエンジン・モデルが日本円で約1300万円(374万7000バーツ)。最上級仕様となる3.5リッター・モデルは約1900万円(538万2000バーツ)。平均所得水準が日本より低い国なのに、驚きの価格ですよね。
驚くほど高いのは、すべて日本からの輸入車であり、高額な関税や贅沢税が含まれているからです。正規モデルだけでなく、並行輸入車もたくさん走っています。この状況はタイだけでなく、インドネシアや香港、マカオでも同じこと。いま、アジア中の富裕層がアルファードとヴェルファイアに熱い視線を送っているのです。
そんなアジアの状況を考えると、ショーファーとして富裕層向けに計画されたレクサス初のミニバン「LM」が大成功するのは想像に難くないのでした。なにせ相手は大金持ち。豪華であれば豪華なほどいいのです。数百万円程度の金額差なんて関係ないのですから。