中古車の残存価値は急速に落ちていきかねない
欧州では、2021年からCO2(二酸化炭素)排出量が、95g/kmへと規制される。これを日本流の燃費で表現すると、計測モードにもよるが24km/Lほど。自動車メーカーの企業平均値として実施されるため、販売するすべての車種の燃費性能の平均値としてCO2排出量、すなわち燃費規制が実施される。これを達成できないと、罰金が科せられるのだ。
近年、欧州自動車メーカーの間でプラグインハイブリッド車(PHEV)の開発が盛んでおり、高級車やスポーツカーなどにおいて電気自動車(EV)を導入する動きが急なのは、このCO2規制へ向けた対応である。昨今人気を高めているSUV(スポーツ多目的車)など、車両重量が重いクルマは規制への対応が深刻。PHEV化やEV化が不可欠である。
2021年からという規制の施行は2年後のことだと思うかもしれない。だが、実は来年の秋から21年モデルの販売が開始されるので、時間的猶予はあまりない。
さらに2030年になると、このCO2排出規制は60g/kmになることがEU(欧州連合)域内で合意されている。これを燃費で表すと、約39km/Lになる。これは、トヨタのプリウスでもっとも燃費に優れる車種での性能に等しく、高級車やSUV、スポーツカーで達成するのは容易ではない。
もちろん、各車種がこの燃費規制値を実現しなければならないわけではない。自動車メーカーの平均値だから、小型車の燃費がはるかに優れていれば、あるいは排ガスゼロなら、燃費の悪いクルマと数値が相殺される。しかし、小型車といえどもエンジンだけでこの燃費達成は不可能。なおかつ小型車であれば価格の安さが不可欠で、電動化する際のリチウムイオンバッテリー分の負担が加わってくるから、こちらも容易ではないだろう。
したがって車両価格に転嫁しやすい高級車は、EV化を進めやすいという読みがある。