消費者の気持ちが一気に変化する可能性も
2030年といえば11年後だ。しかし、承知の通り欧州自動車メーカーのモデルチェンジ周期は、7~8年ほど。たとえば今年発売されたクルマの次期型は、2027年前後に発売されることが予想されるが、2030年のわずか3年前でしかない。その新車が必ずしも60g/km(約39km/L)を満たせていなくてもかまわないが、その時点で30年へ向けたCO2削減の目途が立っていなければ、その自動車メーカーの先行きは危うい。
2030年の規制強化は、欧州自動車メーカーにとってすでに現実的な課題。次の時代へ向けて、いまから消費者に電動化されたクルマの魅力を理解してもらわなければ、たとえ規制を満たした新車を将来開発・市販できたとしても、消費者に受け入れられない事態にもなりかねない。
日本にいると、フランスやイギリスでいわれる、2040年でのエンジン車の販売禁止は遠い未来のことと思われやすい。しかしEUでのCO2規制を理解すれば、それが単なるお題目ではなく差し迫った大問題であるのが見えてくるはずだ。
すでにボルボ・カー・ジャパンは、より小型の車種でのディーゼル車販売を中止し、電動化された動力に転換していくことを昨年表明した。理由は、何年か後の残価を見込めない懸念があるからだ。 また、ジャガー・ランドローバー・ジャパンは、昨年発表したEVモデル「ジャガーI-PACE」の納車をスタートさせる。すでに年内の予定台数は受注済みであるという。同社のレンジローバーのPHEVの販売も、昨年発表済みだ。
さらにポルシェは、EVの「タイカン」を来年にも国内販売を開始する予定。すでにタイカン購入を希望する富裕層が日本にいる。
このように、ガソリンエンジンからディーゼルターボエンジンへ、輸入車を求める富裕層が移行したのと同じように、すでに目先がEVへ移行しようとしている輸入車購入希望者が電動化時代を牽引するかもしれない。
日産リーフも、新型が一充電走行距離を伸ばしたことで、販売に勢いが出たという。そして初代リーフの中古車が出回るようにもなって、よく街で見かけるようになった。こうしてモーター走行のメリットが理解されていくと、携帯電話からスマートフォンへ切り替わったように、消費者の気持ちが一気に変化する可能性もある。
そうなると、現在乗っているエンジン車の価値はどうなるのか。国内では、海外に比べハイブリッド車(HV)が普及することで、EVやPHEVへの関心があまり高まっていないのも事実。一方、ガソリンスタンドの減少が続いている。セルフ式にしても、経営を持ちこたえられないのである。まもなく3万件を切るだろう。 となると、充電設備の整備数と逆転する時期も近づく。遠くのガソリンスタンドへ行くことを面倒に思う人が増えた段階でエンジン車離れがいよいよ動き、中古車としての残存価値は急速に落ちていきかねない。