ATが必要とするエネルギーはロスになる
ただし、MT車であればクラッチ操作やシフトチェンジは人力で行なっていますが、ATを動かすためには油圧や電力などのエネルギーが必要になります。そして、そうしたエネルギーは基本的にエンジンが生み出しています。
とくに小排気量エンジンでは、エネルギー損失は無視できない存在。CVTであれば変速プーリーを押し付ける油圧を生み出すロスがあるし、DCTでもクラッチやシフトチェンジにおいてエネルギーを使っています。
また、伝達効率というのもATのウィークポイント。エンジンとミッションをつなぐトルクコンバーターでのロスは目立ちますが、いまどきのATではロックアップといって、必要に応じて直結状態にする制御を行なっているので、かつてほどのロスが多いというわけではありません。
熱の問題からMTのほうが有利なことも
では、サーキット走行を楽しみたいというユーザーはATを選ぶべきか、といえばその答えはイエスではありません。少なくとも、現状で販売されている多くの市販車ではATはサーキット走行を得意としてはいません。
その理由は熱対策。数周だけ走ってみるという程度であれば問題は露見しないものの、連続周回ではミッションオイルが高熱になってしまいます。そうなると機械を守るためにセーフモードに入ってしまい、スポーツ走行できなくなることも珍しくありません。
そのために、ATフルードを熱に強いタイプに変えたり、ATオイルクーラーを大きくしたり、追加したりといったチューニングが必要になります。もちろんMTであってもハードに走るようになるとミッションオイルクーラーが必要になってくることもありますが、ATのほうがより熱対策が重要といえるのです。
とはいえ、初めてサーキット走行を楽しんでみようというユーザーであれば、ドライビングに集中しやすいAT車で臨むことがおすすめ。サーキット走行というのは、コース各所のポストから出されるフラッグをチェックしながら走る必要があります。クルマの操作に集中してフラッグを見落としたのでは危険です。そうした意味からもサーキットデビューは、操作に余裕の持てるATで始めるのもいいでしょう。