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トヨタ×マツダは提携しているのにナゼ? マツダ3がマイルドハイブリッドを採用したワケ

パワーユニット戦略の一手法として採用

 マツダのパワーユニット戦略に、電気自動車(EV)への取り組みや、ハイブリッドなどの電動化が入っていないわけではない。しかし、新型マツダ3のハイブリッド車(HV)は、世界で先んじて実用化へ踏み出した予混合圧縮着火(HCCI)の構想を採り入れた火花点火制御圧縮着火(SPCCI)を実現するための、マイルドハイブリッドのみのようである。

 先代のアクセラでは、トヨタから供用されたトヨタハイブリッドシステム(THSII)を使ったストロングハイブリッドが車種構成されていたが、マツダ3では、一見したところHVから後退したと見る向きもあるようだ。また、トヨタとの協業がどこで活かされているのか、見えにくくもある。 マツダは、2012年の新世代商品群第1弾のCX‐5から、SKYACTIV技術を全面的に採り入れた。そのうち、パワーユニットに関しては当面エンジン主体で進み、そのなかにはガソリンだけでなくディーゼルを併用することを実行してきた。これにより、一時は東京都の『ディーゼル車NO作戦』によって乗用でのディーゼル車が姿をほぼ消したが、再びディーゼル車が脚光を浴びるようにもなった。

 SKYACTIVエンジンの素晴らしさは、ガソリンであろうとディーゼルであろうと、基本原理に忠実な究極の姿を追求するところにあり、その到達点に予混合圧縮着火・HCCIがある。したがって、HCCIを実現することは、SKYACTIVエンジンの集大成なのである。そこに火花点火制御圧縮着火・SPCCIの実用化があった。これを市販車として十分な動力性能に仕上げるには、低速域でトルクの不足する部分をモーターで補う必要が出たのであろう。そこで、マイルドハイブリッドを採用した、という筋書きであるはずだ。

 したがって、電動化への行程のなかでマイルドハイブリッドを目指したのではなく、SKYACTIVエンジンの究極を実現するため、一つの手法としてマイルドハイブリッドを使ったということであるはずだ。電動化の道筋のなかでの後退ではなく、エンジンを主体としたパワーユニット戦略の一手法としてマイルドハイブリッドになったというわけである。

市場の価値が変化する時期は読めない

 ところが、世の中はEVを含めた電動化を求める動きが強まり、そこに、たとえば日産のe‐Powerは見事に適合した。また、モーターを主力とすることにより、ワンペダルであったり、自動駐車機能であったりという新しい価値も生まれた。

 それに対し、トヨタのTHSIIは、エンジンとモーターのいい所取りの機構であり、モーター主体ではない。燃費の飛躍的な改善に適したシステムではあるが、EVへつながるモーター駆動だから活かせる機能への応用には難しい。マツダが今後市場投入を予定すると伝えられる、ロータリーエンジンを発電用に使うEVレンジエクステンダーの方が構成要素は簡素であるはずだし、モーター駆動の利点も活かすことができる。トヨタとの協業という面では、運転支援などで活かされる道があるのではないか。

  デジタル化が、市場の価値観を素早く転換していく時代にし、それがクルマへの価値観も牽引するようになっている。そうした現代では、エンジンを主力にする発想が時代遅れに見えてくるのである。

 携帯電話がスマートフォンに替わったように、エンジンよりモーターの方がいいという価値観は、自動車メーカーの思惑とは別に消費者の間で今後さらに強まる可能性は高い。それは技術の選択肢としての良し悪しではなく、市場の要求なのである。

 一方で、そうした要求がいつ市場を支配するのかはわからない。だから、いまはエンジンとモーターと混在している。だが、一夜にしてその価値が一変するのが現代である。そして、社会の要請として排ガスゼロを目指さなければならない事態が目の前に迫っている。全国各地で起きている、50年に一度、100年に一度といわれる異常気象を要因とした災害だ。国土交通省が、それを見越した治世に乗り出すとも伝えられる。

 市場の価値が変化する時期は読めないものの、消費者の心の中には、排ガスゼロか、災害に身をゆだねるのかの選択への不安がすでに迫っている。その気持ちが金銭への対価の妥当性とともに表に現れたとき、エンジンの時代は終わるのである。

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