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ミスターBMW Studie 鈴木BOB康昭氏インタビュー 【afimp×Auto Messe Web連載企画 第6回】

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TEXT: 山田弘樹

BMWのセミワークスまで到達

 afimp1月号(2018年12月10日発売号)とafimp3月号(2019年2月10日発売号)、afimp5月号(2019年4月10日発売号)で掲載した”afimp web”連動企画、スタディ鈴木BOB康昭氏の半生を語るロングインタビューの第6回目をお届けいたします。

「afimp5月号」(2019年4月10日発売)掲載前号のあらすじ
 主人公は、BMW専門プロショップ「スタディ」の創始者である鈴木康昭氏(すずき・やすあき)。
 1968年7月30日生まれの50歳。神奈川県横浜市生まれの鈴木氏が1995年、東神奈川のマンションの一階で産声を上げたスタディの創立から、VWやアウディのチューニングを得意とするコックスと出会い、レーシングダイナミクスで始まったBMW人生。そして、BMW専門プロショップスタディをスタートさせ、インターネット時代とE46型3シリーズでブレーク。そして満を辞してレースの世界、SUPER GTへの参戦。そして2011年チャンピオンを獲得する。

2011年S-GT第8戦ツインリンクもてぎ
ポール・トゥ・ウインで大逆転優勝

 SUPER GT初参戦の2008年から3年後。「GSR & Studie with Team UKYO」はBMW Z4 GT3というワークス製のレーシングマシンを得て、いきなりGT300クラスの王者となる。奇しくもこの年は、鈴木サンがGT参戦を決めた存在であるRE雨宮が撤退を表明。エースドライバーである谷口信輝選手が、グッドスマイルレーシングに加わったのも運命を感じさせた。

「2010年に911GT3で闘い方は学んだけれど、メーカーが作ったGT3というレーシングカーには本当に関心させられることが多かったですね。パーツは何kmごとに交換しないといけないとか、ごく当たり前のことが徹底して管理・支持されていた。そしてその通りに壊れた(笑)。’11年の闘いは、最終戦までもつれこんでハラハラしたけれど、その一方では落ち着いて見ていられたとも言えますね」。

「Z4に限らずGT3マシンはスプリングの種類が制限されていて、コーナリングにおける自由度はJAFーGTやFIA-GT2よりも低い。またそんな足回りだから、当然タイヤの負担も大きい。それでもこのときのZ4は、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス:性能調整)の関係もあって、ストレートが速かった。いわば直線番長でしたね(笑)」。

 鈴木氏が語る通り、「初音ミク グッドスマイルBMW(谷口信輝/番場 琢 組)」ことZ4 GT3は、第8戦の舞台となったツインリンクもてぎでポール・トゥ・ウインを決め、大逆転優勝を果たした。ちなみにシリーズ2位は予選から2番手、決勝も2位と、Z4 GT3のテールを捕らえ続けたJIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸 組)。このマシンはGT2車輌であった。

2011年シリーズチャンピオンを獲得して
2012年から本国のBMWがサポート

 そしてこのシリーズチャンピオン獲得が、鈴木サンとBMWとの距離を一気に縮めて行く。
「それまで正直、インポーターであるBMWジャパンさんはレースのことを特に気に掛けていなかったと思うんです。でも本国のBMWから『日本のSUPER GTで、BMWカスタマーチームがチャンピオンを取ったそうじゃないか。きちんとサポートしよう』という内容の、とてもポジティブな連絡が来たのです」。

 さらにタイトル獲得で勢いに乗ったチームは、この年からBMW2台体制を敷いた。チャンピオンナンバー♯0を付けた「GSR 初音ミク BMW」には’12年モデルとなったZ4 GT3を投入。この年からドライバーは、エースである谷口選手の希望によって片岡龍也選手が招聘され、現在でもこのふたりはゴールデンコンビとして活躍している。 一方で昨年のチャンピオンカーは「GSR ProjectMirai BMW」として4号車を引き継ぎ、優勝ドライバーのひとりである番場 琢選手と、2010年に初音ミク X GSRポルシェのドライバーを務めた佐々木雅弘選手の若手コンビを誕生させた。
 成績は、チャンピオンカーである0号車が第2戦富士で優勝を飾るものの、シリーズ優勝は♯911 ENDLESS TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直樹 組)の手に渡った。4号車は22位という結果に終わった。

『よりBMWらしいチームが作りたい』という
BMWからのオファーに応えるチーム作り

 そしてこの頃からスタディは、グッドスマイルレーシングとは別の道を模索し始める。なぜならBMWとの関係が、さらに高まっていったからである。
「嬉しいことに、BMWジャパンから『よりBMWらしいチームが作りたい』というオファーがあったんです。あくまでグッドスマイルレーシングは“ミクちゃん”ありきのチームでしたし、BMWカラーを強めることはできなかった。それにボクとしてもこのオファーは『遂に来たか』という瞬間でしたから、独立したチームを作ろうと、2年をかけて取り組んだんです」。

 こうして1シーズンを挟んだ2014年、鈴木氏は遂に自身のチームである「BMW Sports Trophy Team Studie」を立ち上げたのだった。また、依然グッドスマイルレーシングとの関係も良好で、SUPER GTには’11年に引き続き、2台のBMW Z4 GT3がエントリーするまでになったのである。

 ちなみに「BMW Sport Trophy」というのは、BMWのセミワークス的存在。世界中のレーシングカスタマーから選抜されたチームにのみ与えられる、名誉ある称号だ。この関係を築き上げたことによってスタディは、日本におけるBMWモータースポーツの窓口として、レーシングカーの販売やパーツ供給までも行うようになった。

 さらに鈴木サンは、チーム結成メンバーとして重要な人物たちと活動を開始するようになる。その代表格と言えるのが、前年の鈴鹿1000kmにも第3ドライバーとして参戦したヨルグ・ミューラー選手。そしてDTMドライバーであったアウグスト・ファルフス選手のふたりだった。
「アウグストはBMWを離れてしまったけど、ふたりは20人ほどが名を連ねるワークスドライバーの中でも、中心的な人物です。ただSUPER GTは外人枠はひとりだけだったので、レギュラードライバーは“ヨギー”に頼んで、ファルフスには鈴鹿1000kmの第3ドライバーとして走ってもらうことにしました」。
 もうひとりの日本人ドライバーには、’04年にル・マン24時間耐久レースを制した“世界の荒”こと荒 聖治選手だった。

「セミワークス的な存在となれたことは、とても嬉しかったですよ。でもまだまだBMWとの関係は曖昧でしたから、いかにスタディが日本最高峰のレースにおいて“BMWのワークスチームらしく見えるか”ということには努力しました。もちろんレースだから、勝つことは絶対。でも成績と同時に立ち居振る舞いや身だしなみも整えないと、ワークスチームとは言えない。そういうことを学びましたね」と鈴木サンは当時を振り返る。

 マシンのカラーリング然り、レーシングスーツ然り。ステージやピットウォークにおいても、BMWのスポーティさや清潔なイメージを表現することを徹底した。
「勝負は絶対に勝つつもりでやる。でも上品名華やかさや礼儀正しさも、同時に大切にしなければならない。こういう感覚は、テニスを真剣にやっていた経験が活かされましたね」。

 その言葉通りチーム・スタディは勝負を真剣に追い求めながらも、常に明るく清楚な雰囲気に満ちていた。ムードメーカーになったのは、ヨギーことヨルグ・ミューラー選手だったと言えるだろう。
 この年♯7 Studie BMW Z4は優勝こそなかったものの第3戦以外は常にポイントを獲得し続け、合計62ポイントでシリーズ3位。チャンピオンは、グッドスマイル 初音ミクZ4(谷口信輝/片岡龍也 組)と、2シーズンぶりにBMWがタイトルを獲得した。

ドイツとの交流がさらに強まり、
BMWモータースポーツの認知度が高まった

 14年シーズンの闘いは、結果以上に多くのことを、鈴木サンにもたらしてくれた。開発ドライバーの声を聞くことでBMWの構造のみならずフィロソフィーを理解し、ドイツとの交流がさらに強まった。そして日本でも、BMWモータースポーツの認知度が高まって行ったのである。
 翌’15年はブランパンGP基準のBoP(性能調整)がライバルに有利に働いたことや、日本でのレースにまだ慣れないヨルグ・ミューラーの細かいミスもあり、7号車はいくつかの取りこぼしによってドライバーズランキングが7位、チームランキングは6位に低迷してしまう。
 しかしSUPER GTにおける本格的な苦労は、翌年から始まった。BMWがZ4 GT3に代わり用意した新たなGTマシン「M6 GT3」が、思わぬ苦戦を強いられたのであった。

afimp×Auto Messe Web
連載企画 第7回目は
afimp7月号(6月10日発売)へ続きます。

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