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ランボルギーニがクラシックカーの価格推移を指数化する会社と提携する意義とは

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TEXT: Auto Messe Web編集部  PHOTO: ランボルギーニ

メーカーが発行するクラシックカー公式認定証

 2019年5月下旬ランボルギーニは、クラシックカー専門部門であるポロストリコが、ヒストリック・オートモビル・グループ・インターナショナル(Historic Automobile Group International=HAGI)と連携協定を締結するというニュースを発表した。

 ランボルギーニ・ポロストリコとは、簡単に紹介するのなら2015年にスタートした同社のレストア部門。主な業務は、顧客からの依頼によって過去のモデルのレストア作業を行うほか、ヒストリックカーのスペアパーツの管理や再生製造、ランボルギーニのヒストリックモデルの公式認定証の発行などがある。つまり、ランボルギーニのヒストリックモデルとそのヘリテージの維持をサポートするのである。ポロストリコにレストアを依頼した車両は、純正パーツを使用し新車同然に蘇る。ランボルギーニ自身がレストア作業を行ったことで、「本物」として認められるわけだ。

 この本物を証明するもの、すなわち公式認定書がそのクルマの価値をさらに引き上げる。もちろん、レストアを行わずとも、純正パーツを使用して永年メンテナンスを行ってきた愛車であれば、車両をランボルギーニに持ち込み、由緒正しき車両としてのポロストリコの認証を得ることも可能である。

歴史を生かしてゆく経営戦略

 2016年9月にランボルギーニデイのイベントのために来日したアウトモビリ・ランボルギーニCEOのステファノ・ドメニカリ氏は、「ポロストリコは我々の伝統の価値を高めるための部署である。他社とは違うランボルギーニ独自の過去を正しく振り返り、理解し、その歴史を将来に生かそうと考えている。過去と未来をつなげること、これがランボルギーニの旧くて新しい戦略だ」と、ポロストリコの目的について我々報道関係者に説明した。

 メーカーにしてみれば、自社の過去に販売した車両の価値を守ることができ、オーナーにしてみれば、愛車に対して本物であるとのお墨付きをもらえるというメリットがある。旧い車両の価値が守られるということは、オークションなどで取引される際に価格が安定することを意味する。

 例えば、同じ年式の同じモデルの車両が売られていた場合、ポロストリコの証明書を持っている車両とそうでない車両とでは、例え価格に差があっても、証明書付きの車両を選びたくなるのがコレクターの心情であるはずだ。旧いクルマの価値が市場で維持できれば、メーカーのブランドとしての価値が保たれるのも同じということになり、新型車の販売にも好影響を与える。そんな好循環をもたらす可能性をクラシック部門は携えている、と考えられるわけだ。

 

市場動向を指数化するHAGI

 HAGIは、クラシックカーの大手ブランドを専門に扱う、独立系市場調査・出版会社である。経済分野のニュースで良く目にする銀行系や保険系の総合研究所、いわゆるシンクタンクの自動車版だと思えば分かりやすいかもしれない。金融分野と同様の手法で調査を行い、指数や分析を発表。そのデータは、「フィナンシャル・タイムズ」「ウォール・ストリート・ジャーナル」 「ニューヨーク・タイムズ」各紙や英クラシックカー雑誌「オクタン」などで用いられているという。

 HAGI独自の調査結果やデータには、これまで10万件を超えるオークションや業者、個人などの車両取引結果があり、そのデータベースから生成される指標はブランドや車両の価値を判断する材料として大きな影響を持つとされている。クラシックカー全ての取引を、中立的な立場から判断した結果に基づいており、価格のトレンドを業界に提供している。常に更新されるこの最新市場情報は、ポロストリコがヴィンテージ・ランボルギーニのスペアパーツの生産をする際にも利用されているのだという。

 ランボルギーニは、近年新設されたHAGI LPS(Lamborghini Polo Storico)指数によって、ランボルギーニのクラシックカーの価格推移が確認できると説明する。1963年に設立されたランボルギーニの市販モデル1号車となった350GTから2001年まで生産されたディアブロまでの全モデルを対象に、毎月発表されるLPS指数は、2017年12月31日に基準値100からスタート。LPS指数の年ごとの推移を、2000年から2017年に遡ったシミュレーションでは、クラシック・ランボルギーニ・クラシックカーの価格が10倍に上昇していることが確認できたという。

 ここで冒頭のクラシック部門のハナシに戻る。近年欧州のラグジュアリーブランドやスーパーカーブランドが、自社の歴史の伝承や、過去のモデルのレストアに力を入れているのは、ブランドの価値を高めるためだということはすでに説明した。もちろん、クラシックカー部門も、メーカーの重要な事業である。利益は追求しなくてはならない。しかし、考えてみれば、過去販売したクルマは、減ることはあってもこれ以上はどう頑張っても増えることなどないのである(ジャガーやアストンマーティンが過去のモデルを再生産して販売しているのだが、それは例外とする)。いかにレストア事業に力を入れても、そこでの売り上げはたかが知れている。

 だが、歴史的価値が乏しいブランドに魅力を感じにくいのも事実である。続々と開発・販売される新型車で自動車メーカーはビジネスを展開し、事業を拡大してきた。これはビジネス手法としてこの先も変わらないだろう。だとすれば、ライバルたちとの差別化をどこで行うか。新型車の性能やデザインはもちろんだが、そのクルマの背景、つまり歴史的価値にもユーザーはシンパシーを抱くはずである。

 ランボルギーニでいえば、反骨の創設者フェルッチオ・ランボルギーニの精神や、本格ミドシップV12スーパーカーをどこよりも早くミウラで市販化した事実、未来的なデザインを持つボディとポップアップドアを市販モデルで実現したカウンタック、SUVブームが巻き起こる遙か前に生み出されたV12搭載のLM002など、ユニークな歴史的事実の枚挙にはいとまがない。

「歴史を使ってまでビジネスをしたいのか」と思うか、「そうした歴史があるからこそ、そのブランドを選びたくなる」のかは、人によって違うことかも知れないが、単なる実用車ではないラグジュアリーカーを求める世界のリッチな層に対して、今すぐに作ることのできない「歴史」という付加価値は、セリングポイントのひとつになっているのだろう。メーカーもそれが分かっているからこそ、何十周年記念というイベントを大々的に行い、過去の名車のオマージュたる要素を新型車にも採用するのである。

 そんなドライな見方をせずとも、現代の我々が生まれる前のモデルであってもメーカー自らのレストアによって新車同然の状態で手に入れられるということは、もちろん多額な費用は必要かもしれないが、そのモデルのファンにとっては、まさに夢のような出来事だと思うのだが、いかがだろう。

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