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6000万円で買える究極の市販レーシングカー「NISSAN GT-R NISMO GT3」

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TEXT: 竹内俊介  PHOTO: 柳田由人、増田貴広

国内外のレースを席巻する最新スペックを解剖

「NISSAN GT-R NISMO GT3」。生産車の日産R35型GT-Rに最も近いレースマシンとして注目すべきクルマだが、その2018年モデルの概要をお届けしよう。

 NISSAN GT-R NISMO GT3は、FIAが定める通称”GT3″と呼ばれる車両カテゴリーに属するマシンである。現在、日本の市販車をベースとしたマシンによるレースの最高峰はSUPER GT。その頂点に位置するのはGT500クラスのマシンで、事実上ワークス対決の場となっている。

 一方、GT300クラスはプライベーターチームが参戦できるクラスとして参加台数も多く賑わっている。GT3仕様のマシンは、GT300クラスに参戦できるうえ、スーパー耐久レースシリーズにも参加可能な車両規格となっている。

 このGT3仕様。視線を世界に向けてみれば、市販車ベース競技車のレースのトップカテゴリーで活躍。つまり、世界標準の車両規格である。もともと、FIA・GT選手権シリーズには、GT1クラス、GT2クラスといったカテゴリーが存在していた。下位に位置するGT3クラスはジェェントルマンドライバーの参加するクラスとして、車両コストが高くなりすぎないような規則となっていた。

 ところが、上位カテゴリーが次々と消滅。現在はGT3クラスが頂点のカテゴリーとなっている。GT3の車両規則にはこうした時代背景が今も残っているのだ。改造範囲こそ広いが、車種ごとの性能調整を行なうBoP(バランス・オブ・ パフォーマンス)というシステムを採用しているのである。

 かつての”グループA”は統一した車両規則で改造範囲も同じだったが、GT3は車種ごとに改造範囲が異なるのでわかりにくい。例えば、ある車種では市販モノコックのキャビン部分を残して大幅な改造が許されているが、GT-Rのように、モノコックをそのまま利用しなければならない場合もある。こうした車両規則の背景には、ポテンシャルの高さや特定の車種に人気が集中することを防ぐ狙いがあると思われる。

 また、自動車メーカー側にとって、改造範囲が広いために市販車のポテンシャルはそれほど高くなくても、レース仕様にした際に高性能を得られるマシンに仕立てられるメリットもあると言えよう。その結果、さまざまな車種のレースカーが参加し、見応えのあるレースシーンが生れているのだ。

「NISSAN GTR NISMO GT3」の2018年モデルもこうしたGT3の規則に従って事前に改造内容をFIAに申請し、承認された内容で改造されている。主なアップデートの内容は以下のとおり。

 エンジンは市販のVR38DETT型3.8リッターV6ツインターボをベースに、ドライサンプ方式に変更。また、エンジン搭載位置は150mm下げられ、さらに160mm後方に搭載することでフロントミッドシップとし、重量配分を改善している(以前の15年モデルは市販車と同じ位置にエンジン搭載)。これによってインタークーラーは斜めにマウントされてもいる。

 駆動方式は4WDから後輪駆動に変更したが、トランスミッションを車体後方に搭載するトランスアクスル方式は同じとした。そのほか、空力面やサスペンション、コクピットなども従来モデルより進化させている。なお、フロントまわりのカーボンユニットは、ブレーキ/ラジエータ/インタークーラーなどを効率的に冷却するため、それぞれのダクトを独立して配置している。

 さらに18年モデルではコックピットまわりもアップデート。ステアリングホイールも航空機の操縦桿のような形状で、操作性をより向上させている。実際に座ってみると視界もよくて乗りやすくなった印象だった。

 そして、ドライバーズシート直後にはガソリンタンクを配置し重量物を重心位置付近へ集中させることを狙っているのが分かる。そして、いまやレーシングカーといえどもエアコンを標準装備。オプションで独自のドライバークーリングシステムも装着できるという。

 また耐久レース仕様のためブレーキパッドは驚くほどに厚い。タイヤハウス内にブレーキを冷却するためのダクトを効率的にレイアウト。この辺りにもワークス製レーシングカーの完成度の高さを感じさせる。

*記事はGT-Rマガジン No.145より抜粋

取材協力:ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル

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