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高齢者の事故多発!運転免許証を返納したくてもできない国内事情とは

クルマなしでは生活できない環境

 クルマの暴走による痛ましい事故が後を絶たない。ことに高齢者による事故が目立つことから、運転免許証の返納を警察庁では全国的に推進している。一方で、人口の少ない地域へ行けば行くほどクルマなしでは生活できない環境がある。

 大都市であれば鉄道やバスなど公共交通機関が充実しているので、クルマの必要性は下がるのも事実だ。だが、そう簡単ではない。

 鉄道運賃を調べてみると、首都圏が国内でもっとも安く、大阪や名古屋も大都市であるものの、実は首都圏より運賃が高い傾向にある。

 国内で初乗り運賃がもっとも安いのは、JR西日本である。しかし、それ以外は私鉄を含め首都圏の各路線が上位に並ぶ。地下鉄も、首都圏がもっとも安く、続いて大阪、そして名古屋の順だ。

 以上のように、大都市であっても、集中する人口の違いで公共交通機関の運賃には差があるのである。人口が減少する地域であればなおのこと、鉄道にしてもバスにしても、定期的な運航は経営的に厳しくなるのは目に見えている。運航できたとしても、運賃が高ければ、所得が都市部に比べ低い傾向となる地域での生活を圧迫することになる。税金で補助を行おうとしても、地方自治体の税収が限られるため、それも簡単ではない。

 したがって、どうしても運転免許証を手放せないという切実な実態がある。手助けの一つとして、運転支援技術がある。暴走事故を起こした車種を報道の映像で見る限り、多くが古い年式のクルマである。また、比較的小型であったり軽自動車であったりし、それらはペダル配置や、ハンドル位置調整機能に不十分な車種もある。

 誰もが正しい運転姿勢で、なおかつペダル踏みそこないなどを起こしにくい配置や、ハンドル位置を適切に調整できる機能の充実など、自動車メーカーは基礎から真剣にクルマづくりをやり直す必要があるだろう。

 さらには、運転支援技術の充実と、その普及だ。これには政府が推進するセーフティ・サポートカー(略称サポカー)制度なども活かされていくだろう。

 ほかに、地元の住民が互いに助け合うための特区を設け、2種免許を持たない人が地域の人をミニバンなどで送迎できる仕組みをはじめている地域もある。だが、それにしても、全体的な高齢化のなかで、そうした取り組みがいつまで、どこまでできるかは見通せない。

 相互扶助の観点から、より若い年齢層の地域への移住などといった政策の後押しも必要ではないか。その意味で、今日なお一極集中が進行している都市への人口流入を食い止めるため、かつて議論の対象となった道州制の導入を行い、県単位の自治体では実行しきれない政策をより大きな枠組みで社会制度を充実し、そこから地域特性を活かし、さらに小さな自治体ごとの地域政策を行う。

 その柱となるのは、農業など1次産業の法人化を認めたり、農協など業種団体が、外部から参入する人たちや法人での1次産業への取り組みに対し、地域の土地や権利の所有者に対し保証する制度を実施したりするなど、単にクルマの利用だけに止まらない地域発展の政策の立案と実行が望まれる。

 それによって、各地域での就業の場を掘り起こしてゆけば、若者も自分にあった生きがいを大都市以外でも見つけることができる。たとえば、農家を継ぐのではなく、企業に就職するかたちで農業と関わる事業で働き、地域の特徴を活かした活性化がはかられるようになる。そしてやがては、老若男女が集う相互扶助の社会もつくれるのである。

 クルマの暴走事故を、技術開発や権利を剥奪する従来の枠組みだけで解決しようとするのではなく、人口減少が進む日本の未来へつなげる全体構想としての国の在り方を創造する取り組みをしなければ、いつまでも悲しい事故は絶えないのだと思う。

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