2020年から道路運送車両法に自動運転が追加
2020年以降の高速道路上や、過疎地での限定的な無人による移動へ向けた動きのなかで法整備が追いついてこなかったことから道路運送車両法の一部が改正される。その項目の一つに、保安基準の対象となる装置として、自動運転装置が追加になる。また、それを使用する条件を国土交通大臣が付与する。
自動運転装置とは、運転者の認知・予測・判断・操作のすべてを代替する機能を持つ装置をいう。また、作動状態を記録する装置を含む。これによって自動運転へ向けた開発・実用化・普及を目指し、設計・製造から使用に至るまでの安全性を一体とした制度整備ができることになる。
あわせて、道路交通法も改正が行われ、運転支援のレベル3を認め、運転者がいつでも交代できることを条件に自動運転中のスマートフォンの操作などを認めるとする。
現在、ドイツのアウディなどはレベル3の技術を、高速道路での渋滞中など使用条件を限定することにより市販車に搭載しているが、法整備が進んでいないため、現実的には利用できない。しかし上記法案が成立することで、利用可能となる道が拓ける。
一方で、日産自動車は、先般プロパイロット2.0を発表し、この秋から高速道路の本線における自動走行を実用化するが、その際に運転者はステアリングから手を離せる(ハンズオフ)ものの、周辺の交通状況を自ら認識していることを条件としている。このため技術的にはレベル3であっても、プロパイロット2.0はレベル2の装置であることを明らかだ。開発責任者も「現段階ではそれ以上の運転支援は実用の域ではない」と、話す。
スウェーデンのボルボは、自動運転へ向けた企業姿勢として、レベル2の先は「条件付き自動運転」のレベル3ではなく、それを飛ばして「特定条件下における完全自動運転」のレベル4であるべきだと表明している。レベル3の自動運転装置に何だかの支障が生じたり使用条件に合わなかったりした際に、運転者が適切に運転操作に戻れるのかを懸念したためだ。
また、レベル3では事故の際の責任の所在も、自動車メーカーなのか運転者なのか、クルマの走行中は状況が変化し続けるので、いつから運転者の責任となったかなど、境界を明らかにしにくい。そうしたことからレベル3を否定し、同時にレベル4以上の自動運転車の事故責任は自動車メーカーにあると、ボルボは明言している。
ボルボや日産の姿勢は正しいと私は考える。現実問題として、周囲への注意から意識を外してスマートフォンを見るなどしたあと、走行条件やクルマの不具合などにより運転者が自ら操作に戻ることが適切に行われるとはいえないからだ。直前の交通状況を認識できていない段階で、アクセルペダルを踏むべきか、逆にブレーキペダルを踏んで減速すべきか、あるいはステアリング操作による回避行動をとるべきか、判断できるわけがない。
たとえ渋滞の中であっても、時速20kmで走っていれば、1秒で5.5m前進してしまう。人間は、認知と判断を0.1秒で行うことができるといわれているが、それは自ら運転しているときの話であり、周辺状況を事前に知っていなければ、判断をくだすためにまず現状認識する時間を要する。
高速道路上とレベル3の使用条件を限定したとしても、渋滞中に2輪車が車線の間をすり抜けるなど、不測の事態は常に考えられる。一般公道より不確定要素が少ないとはいえ、クルマと運転者に責任を二股で掛けるレベル3は、中途半端な位置づけだ。技術の開発過程にそうした段階があるのは事実としても、それを市販してよいかどうかは厳しく吟味されるべきだ。
自動車技術の開発とともに、法整備も前へ進む必要はあるが、同時にまた、現場・現物・現実という実際の利用状況における人間の対応力の限界を十分に検証してから実現(市販)する必要がある。レベル3は、たとえ高速道路のような限定された交通環境のなかの、渋滞という条件においても、市販すべきではないというのが私の見解であり、レベル2の次へ進むならレベル4以上であるべきだ。